ヨーロッパを代表する老舗製紙メーカー、ハーネミューレ社の新製品は、なんとオルタナティブ・プロセス用の紙。早速テストプリントを制作してみました。
東京オルタナ写真部では、写真の古典技法を用いた「オルタナティブ・プロセス」のワークショップを開催しています。
印画紙やフィルムが発明される前にも、写真には非常に多くの異なる技法が存在しました。「オルタナティブ・プロセス」はそのようないったん忘れられた技法を用いて現代的な写真表現を探求するムーブメントです。
このような古典技法でプリントする際の紙ですが、水彩画や版画の紙が選ばれることが多いのですが、そのままでは使用できないことがあります。それは現代の高級紙は保存性を高めるためにアルカリ性に調整されているため、古典技法のプロセスに悪影響を及ぼすからです。以前は、紙をわざわざ酸性の薬品に浸して中性にしてから用いる必要があったのですが、ここ最近、高級紙メーカーがオルタナティブ・プロセス用の製品を販売するようになりました。
ハーネミューレ社。創業は1584年!まだドイツじゃなくて神聖ローマ帝国!天正遣欧少年節がヨーロッパに到着した年!その頃ヨーロッパでは、グーテンベルクが発明した活版印刷技術により、印刷革命が起こっていました。紙の需要が急増する中、ハーネミューレ社も創業したのだろうと思います。ちなみに天正遣欧少年節はこのグーテンベルク印刷機を日本に持ち帰り、日本で最初の活版印刷を行いました。
ハーネミューレ社の製品は版画用紙が有名です。同社の版画用紙をインクジェット用に改良した「ジャーマンエッチング」は、重厚な量感と美しい発色で非常に人気のある紙です。
ハーネミューレ プラチナラグ / Hahnemuhle Platinum Rag
鶏卵紙 アルビューメンプリント albumen print
albumen print on Hahnemuhle platinum rag ©Kenshi Daito |
サイアノタイプ Cyanotype
cyanotype on Hahnemuhle platinum rag ©Kenshi Daito |
サイアノタイプ トーニング Cyanotype /tea toned
tea toned cyanotype on Hahnemuhle platinum rag ©Kenshi Daito |
ヴァンダイク・プリント Vandyke print
vandyke print on Hahnemuhle platinum rag ©Kenshi Daito |
まず特徴的なのは発色の美しさ。
白黒写真に発色?と思われるかもしれませんが、作例をみていたいだければわかるように、オルタナティブ・プロセスはとても色彩感があります。この技法独特の色彩がとても美しく発色します。
滑らかで上品な質感。
紙が持っている質感により、プリントの印象は大きな違いが出ます。プラチナラグの質感は柔らかく滑らかな感じです。画が紙の中に沈み込むのでもなく、ただ表面に乗っかっているだけでもない。画と紙が心地よく一体になる印象です。
コーティングのしやすさ。
古典技法は紙に感光液を塗布して印画紙を作ります。もし感光液の塗布が難しい紙だと、画にムラがでてしまいます。プラチナラグは塗布液が非常に伸びやすく繊維によく馴染むため、塗りムラや液だれに悩まされません。
紙の質感と暗部の濃度。
紙の質感を大事にしたいのと、画の暗部をしっかり出したいことは、制作途中でしばしば衝突します。片方を優先するともう片方の結果に不満が残る…。プラチナラグはこの点でも非常に優秀だと思います。プリントの暗部はしっかりと出ますが、紙の物質感もまた十分に感じることができます。
使用上の留意点として
裏表の両方使用できます。それほど大きな差はありません。
紙の表面の強度はあまり強くありません。見える範囲のマスキングテープの使用は避けたほうが良いと思います。またプロセス中は表面を強くこすらないようにしてください。繊維が毛羽立ち、画に影響が出る場合があります。感光液を塗布した後、表面からホコリを取る際には注意してください。
※極度に乾燥させると、技法に関わらずムラが出る傾向があります。感光液を塗布した後、いちど完全に乾燥させ、加湿器で湿気を与えてからプリントすることをおすすめします。
ハーネミューレ プラチナラグ / Hahnemuhle Platinum Rag
- コットン100%、坪量 300g/㎡
- 滑らかで、少し質感のある表面
- 自然な明るい白色
- 完全中性紙(酸性成分なし、アルカリバッファなし)
- 蛍光剤不使用
- 扱いやすく最適化されたサイジング(にじみどめ)
- 美しい階調と非常に深い暗部の表現
- とてもさわり心地がいいですよ
販売店:Silversalt.jp ハーネミューレ製品