ピクトリアリスム風フィルム:フォマ レトロパン/ FOMA RETROPAN 320

フィルム:Foma Retropan ©Yukiko Ogawa


おそらく世間では、銀塩白黒フィルムはどんどん無くなっている、あるいはもうとっくに手に入らないくらいに思われているのかもしれませんが、そんなことないわけです!むしろ新しいフィルムがいくつも開発されて発売されています。

特に最近開発されるフィルムは、かなり個性的なものがあります。その中でもぶっちぎりに変態度の高いフィルム、フォマ レトロパン /FOMA RETROPAN 320を紹介します。

フォマレトロパン

何かを間違えているフィルム、爆誕。


アナログ写真ショップSilversaltの店長ティムによると「きっとフォマは写真乳剤の調合を間違えて作ってしまったのだろう」と言うほどの常識はずれのフィルムです。

ティムはなんとかしてこのフィルムを通常用途に使えるようにテストを繰り返しましたが、あきらめてしまいました。その経緯を知っているので、私も人にはおすすめできないなと思っていたのですが、作例を見せてもらってびっくり。

あ、なるほど。これはかっこいい。

そしてやっぱり人にはおすすめできない!

ピクトリアリスム風フィルム


日本では1910年から1920年ごろにかけてピクトリアリスムと呼ばれる絵画調写真が流行しました。資生堂社長の福原信三がパリを撮影したシリーズなどが有名ですね。

福原信三

当時はこのように、絵のような柔らかいトーンを出すために様々な工夫をしました。しかしただのボケボケ写真だとかっこ悪い。ふわっとやわらかい感じとキリッとシャープな部分とがバランス良く出るようにセンスよく調整することが大事でした。

さてざっくり結論から言うと、フォマ レトロパンは、この1910年ごろのピクトリアリスム写真っぽく仕上がります。その理由はいくつかありますが、もっとも大きな特徴はハイライトがべったべただということ!
マッドです!
泥のようです!
キラキラと輝く光は、このフィルムではどう転んでも表現できません。

FOMA RETROPAN 特性曲線

全然きらきらしないフィルム


上のグラフはアナログ写真ワークショップ参加者の方がテストしてくれた例です(赤線がレトロパン)。このテストは少し特殊なフィルム現像方法でしたが、他の現像テストを見てもおおむね同様の結果になります。これからわかるのは、このフィルム、まともに写るのはシャドウ部だけ。中間部からハイライトにかけてはべたーっとしたグレーになります。

正直に言ってまともなフィルムではありません。ふつうなら絶対販売しないレベルです。さすがにこの性能はひどすぎるので、フォマは専用現像液を販売しています。これを使うと中間からハイライトにかけてのコントラストは多少改善されるようです。Silversaltのティムも高コントラスト現像液などを使って、まともになるように工夫しました。

だがしかし、かっこ悪い!

コントラストをふつうなるように改善すると、粒子が粗い、ハレーションがにじむ、ハイライトのトーンが汚い…と、ただのダメなフィルムになってしまいます。このフィルムを使いこなすには、この泥のようなハイライトと付き合う必要があります。

レトロパンを使うコツ


レトロパンを使ってかっこいい写真を作るコツは、例えばこんな感じです。

  • 重要なモチーフがシャドウ部にある。
  • きらきらしたハイライトは表現できないのであきらめる。
  • ハイライトはぼーと明るい感じに。
  • シャープな現像液を使う。

そして絵画調をねらうのであれば、中間からハイライトが圧縮されてかっこよくなるような被写体を工夫します。つまり、あえて中間部からハイライトに重要なモチーフをもってくる。また、オレンジ色〜赤には感度が高いため、べたーとしやすいので注意。赤い花は灰色の塊になってしまうかもしれません。ただし強い赤は真っ黒になります。女性のポートレートは…やめておいたほうが無難かも。

自然光で撮影する場合、黄色やオレンジフィルターとの相性はいいはずです。

うまくいけば、ここにあげた作例のような、柔らかい鉛筆で描いたデッサンリトグラフ版画のような描写が得られます。
 

©Yukiko Ogawa

 

撮影感度について


さてところでこのフィルムを販売しているいくつかのショップの情報を見ると、このフィルムの撮影感度はISO320~1200でもだいじょうぶですよ!と書いてます。

フィルムをどう使っても自由ですが、このフィルムを上記の感度で撮影するとシャドウ部にはなにも写っていないことは保証できます。このフィルムの感度はそんなに高くありません。

フィルムの撮影感度は説明し始めると長くなるのでここではしませんが、一般的な現像液でシャドウ部をまともに写したければ、撮影感度はISO160以下になるはずです。現像液との組み合わせにもよりますが、ISO100をおすすめします。ただし、低感度で撮影する場合は、ハイライトの描写はより厳しくなります。

マッドなハイライト。
質感描写できるわずかなゾーン。
目立つ粒子。
にじむハレーション。
そして撮影感度設定。

このフィルム、何度もいいますが、非常にクセの強い扱いづらいフィルムです。自分が何をやっているのかを理解して使うことをおすすめします。そしてトライ&エラーを楽しめる人にこそおすすめします

最適なフィルム現像液


このフィルムと組み合わせるおすすめ現像液はシャープな現像液です。微粒子であればなおいいですね。以下はSilversaltで販売している現像液からのチョイスです。

東京オルタナ写真部で、このフォマ レトロパンに合うオリジナル現像液を開発しようか、という話も出ていますが…もしかしたら、ほんとうに作ります。

Silversalt 販売ページ

フォマ レトロパン

フォマ レトロパン データシート

https://www.foma.cz/en/retropan320


現在手に入るすべての銀塩白黒フィルムをこちらで紹介しましたが、その後、新しく出たものや製造中止されたものなどあります。情報のアップデートをしなくては…。します!します!


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