オリジナルフィルム現像液 |東京パイロ TOKYO PYRO
東京パイロは、東京オルタナ写真部ショップにて好評発売中です!
オリジナルフィルム現像液 東京パイロ
東京オルタナ写真部のオリジナル現像液「東京パイロ」をご紹介します。美しい画と使いやすさを両立した他にないキャラクターの現像液です。
マイクや楽器の音質にこだわる音楽の世界では、大量生産の機材に満足できない人々は自ら機材を開発します。そのような小規模生産機材のこだわりの音は「ブティック・トーン」と呼ばれます。
現像液「東京パイロ」は写真のブティック・トーンを目指しました。デジタル画像で写真の加工が簡単に行えるようになった現在だからこそ、デジタルでは代替できないアナログの魅力を最大に活かす技法を提案します。
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パイロ染色現像液
東京パイロは、銀粒子とステイン(染み)で画像を作るパイロ染色現像液です。
パイロは19世紀から現像液に使われていた伝統的な薬品ですが、その後、コダックD-76などのMQ、PQ現像液が主流になるにしたがい、姿を消していました。しかし20世紀の終わりになり"The Book of Pyro"という新しいパイロ処方の本が出版され、衝撃的に復活しました。その後も、Pyrocat-HDやHypercatなどの新処方が多数考案され続けています。いま最も新しい現像液の傾向だと言えると思います。
パイロ染色現像液は日本国内では一般に市販されておらず、また既存の処方も必ずしも満足できるものではなかったため、以前からパイロ染色現像液の自家開発を進めていました。先日のコダックD-76の日本への供給の終了を機会に、新たに開発しなおしたのが、この東京パイロです。
東京パイロ TOKYO PYRO
伝統的な現像主薬、ピロガロール(パイロ)を使ったオリジナル設計の現像液です。先進的な現像液のトレンドを取り入れながら、昔ながらの美しい粒状感も表現できる現像液です。
シャープネスは非常に高く、微粒子で、立体感の表現と美しい質感描写を備えています。
銀粒子とステインが作る画像
アナログの銀塩写真は、金属銀の粒子を黒色顔料として利用しています。通常の現像液は、光があたった部分に金属銀を作ることで画像を生成します。染色現像液は金属銀を作る働きに加えて、銀粒子の周囲を染める作用を持っています。この銀粒子の周囲の染みがステインです。染色現像液で現像されたフィルムは、銀粒子とステインで画像を形成しています。
銀粒子とステインの組み合わせで作られた染色現像液の画像は、独特の性質があります。とくに質感描写において通常の現像液とは異なる特徴を持っています。印画紙プリントはもちろんですが、フィルムスキャン画像でも描写のキャラクターは明らかです。
ハイライトの描写
染色フィルム現像液のトーン描写でもっとも特徴的なのはハイライト描写です。銀粒子の密度が高くなるほどステインの濃度も上昇するため、ハイライト部はステインの影響が強く出ます。
一般的な現像液のネガの粒状感は、中間部ではとても美しいトーンになるのですが、ハイライト部になると粒子の密度が高くなり、ざらざら感やガリガリ感が出てきてしまいます。しかし染色現像液で現像したネガのハイライト部は、ステインの濃度が高くなり粒子の粗さを覆い隠すために、粒状感が抑えられます。
その結果として、湿度を感じるしっとりとしたハイライト描写になります。レンズ描写との組み合わせによってはハイライト部が濡れたような表現になります。東京パイロはハイライトのステインを最適化するように調整しています。
粒状感
銀塩写真の魅力は粒状感の美しさにあると言えますが、東京パイロで現像したネガの粒状感はかなり特徴的です。シャープネスは非常に高いのですが、それでいながら、フィルターを通したような柔らかさも感じさせます。また、銀粒子とステインの組み合わせで濃度を作るため、通常の現像液よりも現像作用が少なくて済むため微粒子になります。
マルチグレード印画紙
東京パイロのステインは黄色がかった褐色をしています。この色がマルチグレード印画紙へのプリントの際に影響を与えます。黄色フィルターは印画紙のコントラストを下げるため、ハイライト部を低コントラストにする傾向があります。この作用により、白飛びを抑えてハイライトの描写をよりなめらかにできる可能性があります。
N±現像テクニック
東京パイロはごくわずかに補正効果(compensation effect)がありますが、特性曲線はほぼリニアです。そのためN±現像テクニックに非常によく反応します。事前のテストは必要ですが、N±2ストップ程度は余裕を持って対応できるポテンシャルがあります。
紫外線露光
多くの写真古典技法(オルタナティブプロセス)は、紫外線で露光します。また、通常の印画紙プリント用のネガよりも、コントラストの高いネガが必要になる技法が多くあります。染色現像液が作る黄色のステインは紫外線を効率よくブロックするため、極端な現像をしなくとも紫外線に対してコントラストを高くすることができ、オルタナティブプロセスに最適なネガを作ることができます。
フィルムスキャン
東京パイロで現像したネガはフィルムスキャンした画像でもアドバンテージがあります。質感描写、シャープネス、全体のトーンのバランスが良いため、スキャン画像の明るさとコントラストを簡単に調整するだけで、非常に美しいアナログトーンが得られます。PhotoshopのプラグインフィルターやAI処理は不要です。
他のパイロ系染色現像液との比較
評価が高く人気のあるパイロ染色現像液の代表として、PMK、Pyrocat-HD、Hypercat、510 pyroなどがあります。とくに510 Pyroは海外の写真コミュニティで熱烈に受け入れられています。これらの現像液と東京パイロの違いを説明します。
東京パイロはPMK、Pyrocat-HD、Hypercatよりも微粒子です。そのため粒状感もより美しいと言えます。シャープネスも劣りません。またPyrocat-HD、Hypercatは指定劇物を使用しているため日本国内での販売や譲渡の際には捺印した売買証明などが必要になります。東京パイロは指定劇物を使用していないため、自由な販売、譲渡ができます。
510 Pyroは、最近写真コミュニティで大きな話題になっている先進的な現像液です。東京パイロは、510 Pyroと比較するとシャドウ部の描写性能が大きく上回っています。シャドウ部のコントラストや質感描写が優れているため、結果として510 Pyroよりもリッチで重厚な画を作ることができます。また、フィルム感度においても510 Pyroより高い感度を実現することができます。
使用方法
東京パイロは、扱いやすい1液現像液です。通常の現像では水で1:100に希釈して使用します。
保存期間はロジナールよりも長い可能性があります。開封済みであっても水で希釈しない限り、性能を落とすことなく数年間使用可能だと考えられます。水で希釈すると劣化が始まるため、静止現像などの特殊な現像ではない場合は、希釈後30分以内程度で現像を終えることをおすすめします。
東京パイロ 現像時間
以下の現像時間は全て、小型フィルム現像用タンクによる実際のテスト結果に基づいています。
フィルム | サイズ | 現像時間 | 撮影感度 |
---|---|---|---|
Rollei RPX100 | 35mm | 7分 | ISO 100 |
Rollei RPX400 | 35mm | 11.5分 | ISO 320 |
Rollei Superpan200 | 35mm | 9分 | ISO 125 |
Rollei Retro80S | 35mm | 9分 | ISO 25 |
Rollei Retro400S | 35mm | 9分 | ISO125 |
Rollei ORTHO 25 plus | 35mm 120 | 8分 | ISO 64 |
Ilford FP4 plus | 35mm | 7.5分 | ISO 125 |
Ilford HP5 plus | 35mm | 10分 | ISO 400 |
Ilford PANF plus | 35mm | 7分 | ISO 40 |
Ilford DELTA100 | 35mm | 7分 | ISO 80 |
Ilford DELTA400 | 35mm | 12分 | ISO 320 |
Ilford DELTA3200 | 35mm | 25分 | ISO640 |
ADOX CMS 20 II | 35mm | 7分 | ISO 12 |
Foma fomapan100 | 35mm | 9分 | ISO 100 |
Foma fomapan 200 | 35mm | 7分 | ISO 100 |
Foma Retropan 320 | 35mm | 8分 | ISO 25 |
Kodak Tmax100 | 35mm | 9.5分 | ISO 50 |
Kodak Eastman Double-X 5222 | 35mm | 7.5分 | ISO 125 |
Kodak Eastman Double-X 5222 | 35mm | 8.5分 | ISO 200 |
FUJI NEOPAN 100 ACROSS II | 35mm | 7.5分 | ISO 25 |
ORIENTAL NEW SEAGULL100 | 35mm | 6分 | ISO 100 |
ORIENTAL NEW SEAGULL400 | 35mm | 17分 | ISO 400 |
Kentmere 100 | 35mm | 6.5分 | ISO 100 |
JCH STREETPAN 400 | 35mm | 15分 | ISO 200 |
停止液は使用せず、水を3回程度入れ替えることで停止します。
東京パイロは、定着処理の間も濃度上昇が続きます。そのため、定着液は中性かアルカリ性の定着液をおすすめします。酸性定着液も使用可能ですが、ステインに影響を与えます。
東京パイロのステイン濃度を最適に最大化する専用定着液「TP Fix」もあわせて開発しましたので、そちらの利用もおすすめします。東京パイロの現像データは全て「TP Fix」で定着処理をしたデータです。
水洗促進剤の使用はステインを減らす可能性があるため、あまりおすすめできません。アルカリ性の迅速定着液を使用することで、通常の酸性定着液よりも水洗時間を短くすることができます。
1液の濃縮現像液であり、また保存性に非常に優れているため、とても扱いやすい現像液です。
回転現像(ロータリープロセッサー)
非常にシャープネスが高く現像力もあるため、JOBOタンクなどを利用した連続回転現像にも使用可能です。希釈率を含む現像方法については事前のテストが必要です。
静止現像などの実験的な現像方法
現像力が高いため、撹拌を極端に少なくした現像などの実験的な方法にも使用可能です。希釈率や現像時間については事前のテストが必要です。
東京パイロ専用定着液 「TP Fix」
「TP Fix」は、東京パイロのためにチューニングされた定着液です。
東京パイロはそのユニークな性質により、現像処理の後の定着プロセスまで濃度上昇が続きます。そのため、定着液の性能もネガに影響を与えます。
「TP Fix」は、東京パイロのステイン濃度を最適化かつ最大化するように設計されています。TP FixはpH8以上のアルカリ性になっており、クリアタイムはRPX100などの古典粒子フィルムで10秒台と極めて速く、定着時間は1.5~4分と短時間です。水洗促進剤を使用しなくても流水5〜10分程度で水洗を完了できます。水洗促進剤はステイン濃度を下げる可能性があるため、あまり使用をおすすめしません。
公開している東京パイロの現像データは全て定着処理にTP Fixを使用しています。
東京パイロ販売サイト、オープンしました。