オリジナルフィルム現像液 |東京パイロ TOKYO PYRO

現像液:東京パイロ フィルム:RPX100(35mm)

説明会&販売会を開催しました。現在、パイロット版の予約受付中です
現像データを随時更新中です

オリジナルフィルム現像液 東京パイロ

東京オルタナ写真部のオリジナル現像液「東京パイロ」をご紹介します。美しい画と使いやすさを両立した他にないキャラクターの現像液です。

マイクや楽器の音質にこだわる音楽の世界では、大量生産の機材に満足できない人々は自ら機材を開発します。そのような小規模生産機材のこだわりの音は「ブティック・トーン」と呼ばれます。

現像液「東京パイロ」は写真のブティック・トーンを目指しました。デジタル画像で写真の加工が簡単に行えるようになった現在だからこそ、デジタルでは代替できないアナログの魅力を最大に活かす技法を提案します。


ダウンロード(PDF)

データシート(取扱説明書)

安全データシート(SDS)


パイロ染色現像液

東京パイロは、銀粒子とステイン(染み)で画像を作るパイロ染色現像液です。

パイロは19世紀から現像液に使われていた伝統的な薬品ですが、その後、コダックD-76などのMQ、PQ現像液が主流になるにしたがい、姿を消していました。しかし20世紀の終わりになり"The Book of Pyro"という新しいパイロ処方の本が出版され、衝撃的に復活しました。その後も、Pyrocat-HDやHypercatなどの新処方が多数考案され続けています。いま最も新しい現像液の傾向だと言えると思います。

パイロ染色現像液は日本国内では一般に市販されておらず、また既存の処方も必ずしも満足できるものではなかったため、以前からパイロ染色現像液の自家開発を進めていました。先日のコダックD-76の日本への供給の終了を機会に、新たに開発しなおしたのが、この東京パイロです。

 

東京パイロ TOKYO PYRO

伝統的な現像主薬、ピロガロール(パイロ)を使ったオリジナル設計の現像液です。先進的な現像液のトレンドを取り入れながら、昔ながらの美しい粒状感も表現できる現像液です。

シャープネスは非常に高く、微粒子で、立体感の表現と美しい質感描写を備えています。

銀粒子とステインが作る画像

アナログの銀塩写真は、金属銀の粒子を黒色顔料として利用しています。通常の現像液は、光があたった部分に金属銀を作ることで画像を生成します。染色現像液は金属銀を作る働きに加えて、銀粒子の周囲を染める作用を持っています。この銀粒子の周囲の染みがステインです。染色現像液で現像されたフィルムは、銀粒子とステインで画像を形成しています。

銀粒子とステインの組み合わせで作られた染色現像液の画像は、独特の性質があります。とくに質感描写において通常の現像液とは異なる特徴を持っています。印画紙プリントはもちろんですが、フィルムスキャン画像でも描写のキャラクターは明らかです。

ハイライトの描写

染色フィルム現像液のトーン描写でもっとも特徴的なのはハイライト描写です。銀粒子の密度が高くなるほどステインの濃度も上昇するため、ハイライト部はステインの影響が強く出ます。

一般的な現像液のネガの粒状感は、中間部ではとても美しいトーンになるのですが、ハイライト部になると粒子の密度が高くなり、ざらざら感やガリガリ感が出てきてしまいます。しかし染色現像液で現像したネガのハイライト部は、ステインの濃度が高くなり粒子の粗さを覆い隠すために、粒状感が抑えられます。

その結果として、湿度を感じるしっとりとしたハイライト描写になります。レンズ描写との組み合わせによってはハイライト部が濡れたような表現になります。東京パイロはハイライトのステインを最適化するように調整しています。

粒状感

銀塩写真の魅力は粒状感の美しさにあると言えますが、東京パイロで現像したネガの粒状感はかなり特徴的です。シャープネスは非常に高いのですが、それでいながら、フィルターを通したような柔らかさも感じさせます。また、銀粒子とステインの組み合わせで濃度を作るため、通常の現像液よりも現像作用が少なくて済むため微粒子になります。

マルチグレード印画紙

東京パイロのステインは黄色がかった褐色をしています。この色がマルチグレード印画紙へのプリントの際に影響を与えます。黄色フィルターは印画紙のコントラストを下げるため、ハイライト部を低コントラストにする傾向があります。この作用により、白飛びを抑えてハイライトの描写をよりなめらかにできる可能性があります。

N±現像テクニック

東京パイロはごくわずかに補正効果(compensation effect)がありますが、特性曲線はほぼリニアです。そのためN±現像テクニックに非常によく反応します。事前のテストは必要ですが、N±2ストップ程度は余裕を持って対応できるポテンシャルがあります。

紫外線露光

多くの写真古典技法(オルタナティブプロセス)は、紫外線で露光します。また、通常の印画紙プリント用のネガよりも、コントラストの高いネガが必要になる技法が多くあります。染色現像液が作る黄色のステインは紫外線を効率よくブロックするため、極端な現像をしなくとも紫外線に対してコントラストを高くすることができ、オルタナティブプロセスに最適なネガを作ることができます。

フィルムスキャン

東京パイロで現像したネガはフィルムスキャンした画像でもアドバンテージがあります。質感描写、シャープネス、全体のトーンのバランスが良いため、スキャン画像の明るさとコントラストを簡単に調整するだけで、非常に美しいアナログトーンが得られます。PhotoshopのプラグインフィルターやAI処理は不要です。

 

他のパイロ系染色現像液との比較

評価が高く人気のあるパイロ染色現像液の代表として、Pyrocat-HD、Hypercat、510 pyroなどがあります。とくに510 Pyroは海外の写真コミュニティで熱烈に受け入れられています。これらの現像液と東京パイロの違いを説明します。

東京パイロはPyrocat-HD、Hypercatよりも微粒子です。そのため粒状感もより美しいと言えます。シャープネスも劣りません。またPyrocat-HD、Hypercatは指定劇物を使用しているため日本国内での販売や譲渡の際には捺印した売買証明などが必要になります。東京パイロは指定劇物を使用していないため、自由な販売、譲渡ができます。

510 Pyroは、最近写真コミュニティで大きな話題になっている先進的な現像液です。東京パイロは、510 Pyroと比較するとシャドウ部の描写性能が大きく上回っています。シャドウ部のコントラストや質感描写が優れているため、結果として510 Pyroよりもリッチで重厚な画を作ることができます。また、フィルム感度においても510 Pyroより高い感度を実現することができます。

使用方法

東京パイロは、扱いやすい1液現像液です。通常の現像では水で1:100に希釈して使用します。

保存期間はロジナールよりも長い可能性があります。開封済みであっても水で希釈しない限り、性能を落とすことなく数年間使用可能だと考えられます。水で希釈すると劣化が始まるため、静止現像などの特殊な現像ではない場合は、希釈後30分以内程度で現像を終えることをおすすめします。

現像時間

フィルムサイズ現像時間撮影感度
Rollei RPX10035mm7分ISO 100
Rollei RPX40035mm11.5分ISO 320
Rollei Superpan20035mm9分ISO 100
Rollei Retro80S35mm9分ISO 20
Rollei ORTHO 25 plus35mm
120
8分ISO 64
Ilford FP4 plus35mm7.5分ISO 125
Ilford HP5 plus35mm11分ISO 400
Ilford PANF plus35mm7分ISO 40
Ilford DELTA10035mm7分ISO 80
ADOX CMS 20 II35mm7分ISO 12
Foma fomapan10035mm9分ISO 80
Foma Retropan 32035mm8分ISO 25
Kodak Tmax10035mm9.5分ISO 50

停止液は使用せず、水を3回程度入れ替えることで停止します。

定着液は中性かアルカリ性の定着液をおすすめします。酸性定着液も使用可能ですが、ステインの量を減らす可能性があります。専用の定着液「TP Fix」も開発しましたので、そちらの利用もおすすめします。

水洗促進剤の使用はステインを減らす可能性があるため、あまりおすすめできません。アルカリ性の迅速定着液を使用することで、通常の酸性定着液よりも水洗時間を短くすることができます。

1液の濃縮現像液であり、また保存性に非常に優れているため、とても扱いやすい現像液です。

回転現像(ロータリープロセッサー)

非常にシャープネスが高く現像力もあるため、JOBOタンクなどを利用した連続回転現像にも使用可能です。希釈率を含む現像方法については事前のテストが必要です。

静止現像などの実験的な現像方法

現像力が高いため、撹拌を極端に少なくした現像などの実験的な方法にも使用可能です。希釈率や現像時間については事前のテストが必要です。

 

東京パイロ専用定着液 「TP Fix」

TP Fix」は、東京パイロのためにチューニングされた定着液です。ステイン濃度を最適化かつ最大化するように設計されています。TP FixはpH8以上のアルカリ性になっており、クリアタイムは10秒台と極めて速く、定着時間は最長2分と短時間です。水洗促進剤を使用しなくても流水5〜10分程度で水洗を完了できます。水洗促進剤はステイン濃度を下げる可能性があるため、あまり使用をおすすめしません。

 

現像液:東京パイロ フィルム:RPX100(35mm)

パイロット版について

今回のご案内を「パイロット版」としている理由は、パッケージが簡易であることと、現像データがまだ少ないことによります。パイロット版でも問題なく使用できます。今後も現像液の内容の変更は行わないため、このパイロット版を利用してデータを取得していただくことは可能です。東京パイロのレシピは完成しているため、基本的に今後の変更はありません。

もし予約を多数いただいた場合は購入をお待ちいただくことになるかもしれません。今後、長く提供できるように考えていますので、急がずお待ち下さい。

また長く信頼して使用していただけるように、もしなんらかの理由により東京パイロが提供ができなくなった場合は、製造方法を公開するようにします。

パイロット版の価格は以下の通りです。予定販売価格より低く設定しています。

現像液 東京パイロ

100ml (処理液10L分 希釈率 1:100)
シリンジ 5mlが付属します。

パイロット版価格 2,200円

定着液 TP Fix

粉末(原液500ml分)
溶解した原液そのままか、2倍に希釈して使用します。

パイロット版価格 1,000円

説明会&販売会

5月3日に東京パイロの説明会と販売会を開催しました。予想以上の多くの方にご参加いただき、ありがとうございました。説明会の録画を近日中に公開予定です。

パイロット版の予約は下記フォームよりお願いいたします。この機会に、アナログ写真の新しい画「東京パイロ」を育てていくコミュニティにご参加ください。

現像液:東京パイロ フィルム:RPX100(35mm)