リスプリント:写真暗室のXスポーツ/ Lith Printing

東京オルタナ写真部 リスプリント・ワークショップ参加者作品 ©Yukiko Ogawa / ©Kenta Sueoka / ©Asami Ono

リスプリント・ワークショップを開催しました

アナログ白黒写真のプリント技法、リスプリント(lith print)のワークショップを行いました。

強烈な色彩とコントラストを生み出す銀塩プリントテクニック「リスプリント」。少しダークで退廃的にも見える表現が魅力の技法です。
今回のメインの講師はSilversaltのティム・モーグでした!

次回開催予定 2019年10月6日(日)

 リスプリントのワークショップを開催します。強烈な色彩とコントラストを生み出す銀塩プリントテクニック「リスプリント」。少しダークで退廃的にも見える表現が魅力のプリント技法です。調整の難しいリスプリントのテクニックを、アナログ写真ショップSilversalt...

 

リスプリントとは何かというと…

リスプリントとは何かというと…
いや、リスプリントは何ではないかを先に説明したほうがいいかもしれません。

まず、印刷製版に使われるリスフィルムとは関係ありません。これはよくある誤解です。「リスフィルムの専用現像液を使うのでリスプリント」という説明をしばしば見かけますが、間違いです。

またリスプリントは古典的な写真技法でもありません。銀塩印画紙が普及した後に考案されました。

ではリスプリントとは…言うなれば、失敗した印画紙プリントです。

 

写真暗室のXスポーツ

暗室でプリントをする人は誰もが必ずやるあの失敗…引き伸ばし機のレンズ絞りをセットするのを忘れて、印画紙を露光オーバーにしてしまったことがあるはずです。この露光に失敗した印画紙は、現像液に浸すと真っ黒になってしまいます。しかし、もし現像液に浸した瞬間に失敗に気づいて急いで印画紙を引き上げたら…それがリスプリントです。つまり、露光オーバーで現像不足の印画紙プリントなのです。

その結果は、ハイライト部とシャドウ部で濃度やコントラストが異なり、黄色みがかった色を帯びたプリントになります。要するにバランスの崩れた奇妙な写真ができあがります。

かつて世界中にあった無数の写真暗室で、何人もの人がプリントを失敗して「お、なんだこれ!かっこいい!」と思ったのでしょうね。次からはその「失敗プリント」を作ることを目的に工夫をはじめました。まさに写真暗室のXスポーツ

 

リスプリント ©SILVERSALT / Tim Moog

 

極端な表現でかっこいい写真も、出たとこ勝負の行き当たりばったりではなく、適切な効果を狙って調整したくなります。そのためには、なるべく同じ結果を再現できるようになる必要があります。

まずは現像時間を一瞬ではなく延長すると安定した処理ができる。そのためには現像液を薄めればいい!しかしそうすると現像液の寿命が非常に短くなる!よし保存料を追加だ!いやもっとコントラストや色を調整したい!現像液の構成を変えよう!…と、さまざまな工夫が重ねられた結果、リスプリント専用現像液が生まれました。かつてはリスプリント専用の印画紙も市販されていました。

リスプリントの欠点としては、画の階調の深さが失われることです。極端で無理な現像をするために、印画紙の階調表現の性能を大きく犠牲にしてしまいます。それを補っているのが色によるコントラストです。このため、作品画像をモニターやスマホ画面で見るとかっこよくても、実物のプリントは深みがなく魅力に乏しいということが起こりがちです。本当にかっこいい作品にするためには知識とセンスが必要な技法です。

 

リスプリントの名前の由来?

リスプリント(lith print)という名前は、おそらくリトグラフ(lithograph)から来ているのだろうと思います。フランスの画家ルドンのリトグラフはたとえばこんな感じです。

 

Smiling Spider by Odilon Redon, 1891

 

ちょっとトーンが似ていますね。ここからリトグラフ風写真プリントという意味あいでリスプリントと呼ばれるようになったのではないかと思います。とはいえ、リスプリントとリトグラフは技法的にはまったく無関係です。

 

銀塩印画紙表現のワークショップ

リスプリントは化学反応で作られます。通常の印画紙プリントとは異なり、リスプリントでは感染現像と呼ばれる独特の現像反応が起こります。このワークショップでは、化学反応のメカニズムの解説と、狙い通りの画を作るためのデータの取得方法などの実践テクニックの実習を行いました。

いや、みなさん、素晴らしいプリントを作ることができました!しかし、これは基礎クラスです。コントラスト調整や、色味の調整を行う「リスプリント応用クラス」も準備したいと思います。

またこの後も引続き、銀塩印画紙の表現を拡張するワークショップシリーズを続けたいと思います。つぎは調色(トーニング)のワークショップを企画しています。今後のワークショップ予定は下記ページをご参照ください。内容が決まり次第、募集告知していきます。

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開催予定のワークショップは「現在募集中のワークショップ」のページをごらんください。

現在募集中のワークショップ

 

自家製LEDセーフライト

そうそう、リスプリントは暗室で長時間作業になるため、通常の暗室用セーフライトが使えないことがあります。今回はティムがLEDセーフライトを自作して持ってきてくれました。これが驚くほど明るい!しかもこの光なら印画紙に30分以上あてても安全!プリントの状態をしっかり目視で確認しながら作業することができました。これまでの薄暗い暗室はいったい何だったのか!


リスプリントの材料

リスプリントの薬品はSilversaltで取り扱っています。

Silversalt:リスプリント薬品

リスプリントに適した印画紙や、リスプリント用現像液以外の薬品も合わせてSilversaltにお問い合わせください。

マーシュ イージーリス現像液

 


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