最新更新日:2022年2月10日

もしかすると、いまどき銀塩写真を始めたいひとがいないとも限らない。

万が一、そんな人がいた場合に備えて最近の銀塩写真情報をぼちぼちとまとめていきます。カメラ編に続きフィルム編。それもモノクロフィルム。
風前のともし火と言われはや10年余。名を変え、国を変え、しぶとく生き続けています。
I'm still STANDING!!

モノクロフィルム、まだ買えます。買えますとも。今回はドイツの謎多きブランドRollei。

 

写真用モノクロフィルムの現状

 

そもそもカラーフィルムが普及した時点で、モノクロ(白黒)フィルムはまだ必要なのか?という議論もあったのではないかと思います。しかし、白黒フィルムはカラー時代を生き抜きました!それは、カラーフィルムをモノクロ画像にするよりも、最初からモノクロフィルムで撮影した方がだんぜんきれいだったからです。

デジタル時代にも同じことが言えるとは思うのですが、デジカメにフィルムを入れて撮影するわけにいかないので、フィルムカメラが衰退するとともにフィルム生産も大幅縮小されました。しかしモノクロフィルムはこのまま無くなるのか、と思いきや、国を変え、会社を変え、工場を変えて、多くのモノクロフィルムの生産はまだ続いています。

 

Rollei ローライフィルム

 

今回紹介するモノクロフィルムメーカーは「ローライ」です。
というか「マコ」です。
というか「アグファ」です。いや「イルフォード」です。

ワケ、
ワカ、
ラン。  

2010年ごろに登場した写真フィルムブランド「ローライ/Rollei」。ローライと言えばもちろん、あの2眼レフカメラで有名なメーカーです。フィルム?フィルムは作っていません。では最近になってフィルム製造にも進出したのかというと、そうではなくてブランド名義だけ使用しているようです。  

では「ローライフィルム」の実体は何かというと、販売しているのはドイツのマコです。マコは最近まで自社ブランドのフィルムを販売していたのですが、そちらは既に販売終了し、ローライブランドのフィルムを販売するようになりました。

ローライのモノクロフィルムは驚くほどラインナップが充実していたため、当初からその「正体」が話題になっていました。   実はローライフィルムの多くを製造しているのはアグファのベルギー工場です。そのため、ローライブランドのフィルムの一部は、かつてアグファから販売されていたフィルムと同じものだと言われています。  

例えばローライRetro100と400は、アグファ APX100と400。ローライ Superpn200は、アグファ Aviphoto Pan200と同じもののようです。またRPXシリーズの製造をしているのはイルフォードで知られるハーマンテクノロジー社です。

Rollei ブランドサイト

 

ローライフィルムは種類が多いので、わかりやすいように(勝手に)グループ分けしてみました。

  1. 通常用途の高品質フィルム
  2. 航空写真系個性派フィルム
  3. グラフィックフィルム系「勝負フィルム」
  4. 赤外線フィルムなどのクリエイティブ系

 


 

高品質古典派ラインナップ

 

Rollei RPX 25

 

このフィルムは低感度の超微粒子、高精細フィルムです。ドキュメント用フィルムではないため、通常の現像液を使って連続したトーンの画像を得ることができます。またこのフィルムはパンクロマティック(可視光の全ての色に感光)です。

 

©Regular Rod @Flickr
Rollei RPX 25

 

  • フィルム感度とサイズ
    • 25
    • 35mm、120サイズ 、シート(4x5)
  • データシート(PDF) Rollei RPX25

 

Rollei RPX 100

 

 

中庸感度のパンクロマティックフィルム。品質や使いやすさから見て、ローライのモノクロフィルム・ラインナップの中で、もっともレギュラーなポジションのフィルムだと言えそうです。伝統的な旧型乳剤。リッチなトーンとコントラスト。

 

 

  • フィルム感度とサイズ
    • 100
    • 35mm、120サイズ
  • データシート(PDF) Rollei RPX100

 

Rollei RPX 400

 

高感度パンクロマティックフィルム。

 

©Francesco Coiro @Flickr
Rollei RPX400

 

  • フィルム感度とサイズ
    • 400(400〜3200)
    • 35mm、120サイズ 、シート(4x5)
  • データシート(PDF) Rollei RPX400

 


 

航空写真系個性派フィルム

 

Rollei RETRO 80S

 

アグファAviphot Pan 80(航空写真用フィルム)と同等のフィルムです。なだらかな階調と美しい粒子。ハレーション防止層の添加により、名前とは裏腹に、画はかなり現代的な印象です。オールドレンズよりも最新レンズでシャープに仕上げたい感じです。かなりコントラストが高いので、雨や曇りの日など低コントラストのシーンの撮影に最適です。(高コントラストのシーンの撮影に使用すると、シャドウ部やハイライト部にディテールが得られない場合があります。)

赤外線領域(750nm付近)まで感光性があるため、フィルターを使って赤〜赤外域の光で撮影することができます。カブリを生じやすいため、フィルム装填時は直射日光を避けてください。

シャドウ部の濃度が上がりにくいので、露光に注意が必要です。現像液との組み合わせによっては実効感度がISO20程度になる場合があります。また、ハイライトはごきげんにどこまでも濃度上昇するので、現像時間にも注意が必要。撮影前に必ずフィルム現像のデータをチェックするようにしてください。

 

Rollei Retro 80s
現像液:Tokyo Calling(オリジナル)
©東京オルタナ写真部

 

  • フィルム感度とサイズ
    • 80
    • 35mm、120サイズ
  • データシート(PDF) Rollei Retro 80s

 

Rollei SUPERPAN 200

 

RETRO 80sと同様の印象のフィルムです。80sよりも感度が高い分、現像方法の影響を大きく受けます。精細感は80sに劣りますが、がりっとした力強さはあります。RETRO 80sと同じくコントラストは高く、公称感度のISO200だと画に力がなくなるため、ISO100かそれ以下の感度での使用をおすすめします。シャドウ部の描写は苦手です。シャドウ部に重要なモチーフがある場合は撮影感度をISO20程度に落とすと良い場合もあります。

このフィルムも赤外線領域まで感度があるため、フィルターを使うことで赤外線写真に近いトーンを狙うことができます。カブリやすいので、フィルム装填は直射日光を避けてください。アグファAviphot Pan 200と同等のフィルムです。

 

©Kenshi Daito
Rollei SuperPan200
現像液:ロジナール改(オリジナル)
©Kenshi Daito
Rollei SuperPan200
現像液:ロジナール改(オリジナル)

 

  • フィルム感度とサイズ
    • 200(12~400)
    • 35mm、120サイズ
  • データシート(PDF) Rollei SuperPan 200

 

Rollei RETRO 400S

 

このフィルムはアグファAviphot Pan 400と同等のフィルムですが、Rollei SuperPan 200と非常によく似ています。撮影感度はISO100程度になることが多いので、撮影前に現像データを確認することをおすすめします。赤外域まで感光性があります。

  • フィルム感度とサイズ
    • 400
    • 35mm、120サイズ
  • データシート(PDF)

 


 

グラフィックフィルム系「勝負フィルム」

 

Rollei Ortho 25

 

超細密描写が可能なグラフィック・フィルム(オルソマティック)。おそらく今後、上記のATO2.1から置き換わっていくフィルムだと思われます。Rollei RLCなどローコントラスト現像液で現像すると連続トーンの写真が得られます。最新レンズの性能を最大に引き出し、かりっかりの画で攻めたいときに投入すると、無敵です。まちがってもカメラを手持ちで撮影したりしないように!常に三脚使用。

2020/ 02/ 10 追記

Rollei Ortho25は全く異なる乳剤に変更されました。現在のRollei Ortho25はより高感度で、通常の現像液で連続したトーンが得られます。

Rollei Ortho25
©東京オルタナ写真部

参考記事

 

「白黒フィルムの色彩の魔術」シリーズ、4回目は、フィルムが写す「黒い顔」について。ゴシックホラー映画『ライトハウス』昨年公開された映画のおすすめリストがあちこちで公開されていますが、写真と映画と文学に関心があるなら、この映画は外せません。映画『ライトハウス』!(製作年は2019年)映画『ライトハウス』19世紀ゴシック・リヴァイヴァルの雰囲気を現代映画に色濃くこってりとよみがえらせた傑作映画です。なんといってもこの映画、絵面がすごい。黒。とにかく黒い。こんな黒いものを映画館のスクリーンで見たことがな...
  • フィルム感度とサイズ
    • 25
    • 35mm、120サイズ、シート(4x5、5x7、8x10、12x16、2.25x3.25インチ)
  • データシート(PDF)

 

Rollei ATP 1.1(製造中止)

 

※2020年2月時点でmacoのサイトで製造を確認できませんでした。しかし専用現像液Rollei ATP-DC/ABはまだ販売中のようです。

超細密描写が可能なパンクロマティックフィルム。元々はドキュメントフィルムだったようですが、改良を加えて、高性能なピクトリアルフィルムとして生まれ変わったそうです。専用現像液としてRollei ATP-DC/ABが用意されています。赤外域近くまで感光性があるため、カメラへのフィルム装填時は直射日光を避けることが勧められています。

 

  • フィルム感度とサイズ
    • 40
    • 120サイズ
  • データシート(PDF)

 

Agfa Copex Rapid

 

こちらもパンクロマティック・ドキュメントフィルム。しかし感度が高くなっています。ASA50!ドキュメントフィルムでは画期的!35mmサイズがあるのが嬉しいですね。専用現像液はシュプール社からModular URが発売されています。

こちらはRolleiではなく、Agfa-Gevaert Aviphotブランドで出ています。

 

 

  • フィルム感度とサイズ
    • 50
    • 35mm、120サイズ
  • データシート(PDF)

 


 

赤外線フィルムなどのクリエイティブ系

 

Rollei Infrared 400S

 

このフィルムは赤外線領域の820nmまで感光性があるフィルムです。(肉眼で見ることができるのは700nmぐらいまでです。)波長の長い赤外線は錯乱しにくいため、遠景まではっきりと写すことができます。また、植物の葉など赤外線を反射するものは白く写ります。可視光線をカットするフィルターを使うと、完全に赤外線だけで撮影することができます。その際、露出計では露出を正確に計れません。またピント位置がずれるので注意。

 

©Martin Hughes @Flickr
Rollei Infrared400

 

  • フィルム感度とサイズ
    • 35mm、120サイズ、シート(4x5)、70mm
  • データシート(PDF) Rollei Infrared 400s

 

Rollei 400 Professional 70mm

 

ダブルパーフォレーションの70mmフィルム。公称感度はISO200~400。近赤外線領域まで感光性があり、715~750nm以下をカットするフィルターの使用が推奨されています。つまり肉眼では真っ黒なフィルターですね。データシートは公開されていません。

  • フィルム感度とサイズ
    • 200~400
    • 70mm x 30.5m
  • データシート未公開
  • 製造中止

 

Rollei Blackbird

 

トイカメラ愛用者向けのハイコントラスト・フィルム。美しいトーン再現よりも、シャープにぱかっと写すのに最適。

  • フィルム感度とサイズ
  • 25〜100
  • 35mm
  • データシート 未公表(ASA100:現像液D76 20℃ 10分)
  • 2021年現在、メーカー在庫無し

Rollei Paul & Reinhold 135

 

Rolleiブランド100周年記念、限定生産

銀塩写真の最近の情報をまとめるシリーズ、モノクロフィルム編。
前世紀の遺物。風前のともし火。なんとでも言え。どっこい生きてます。
さすらいのヨーロッパ編。
ヨーロッパでは、かつての名フィルムたちが製造中止と再生産をくりかえしています。
次回はドイツADOX


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写真用白黒フィルム全リスト:各年度版

 


 

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開催予定のワークショップ

開催予定のワークショップは「現在募集中のワークショップ」のページをごらんください。

 

フィルム:Rollei RPX400 現像液:ADOX FX39
ワークショップ撮影実習にて
©東京オルタナ写真部

 

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