銀塩写真を始めたい人へ:モノクロフィルム編 #4 イルフォード/ケントメア: ILFORD/ Kentmere

もしかすると、いまどき銀塩写真を始めたいひとがいないとも限らない。


万が一、そんな人がいた場合に備えて最近の銀塩写真情報をぼちぼちとまとめていきます。

カメラ編に続きフィルム編。それもモノクロフィルム。
風前のともし火と言われはや10年余。名を変え、国を変え、しぶとく生き続けています。I’m still STANDING!!

モノクロフィルム、まだ買えます。買えますとも。今回は写真発祥の地イギリスからILFORDとKentmere

★写真用モノクロフィルムの現状

 

そもそもカラーフィルムが普及した時点で、モノクロ(白黒)フィルムはまだ必要なのか?という議論もあったのではないかと思います。しかし、白黒フィルムはカラー時代を生き抜きました!それは、カラーフィルムをモノクロ画像にするよりも、最初からモノクロフィルムで撮影した方がだんぜんきれいだったからです。

デジタル時代にも同じことが言えるとは思うのですが、デジカメにフィルムを入れて撮影するわけにいかないので、フィルムカメラが衰退するとともにフィルム生産も大幅縮小されました。しかしモノクロフィルムはこのまま無くなるのか、と思いきや、国を変え、会社を変え、工場を変えて、多くのモノクロフィルムの生産はまだ続いています。

 

 

■ILFORD イルフォード

 

イルフォードといえばモノクロ印画紙。
まだオルタナティブ写真を始める前、イルフォードの多諧調印画紙マルチグレードにはお世話になりました。そして嬉しいことに、現在もイルフォードの印画紙のラインナップは存続しています。しかも「ダイレクトポジティブペーパー」という、フィルムなしで直接撮影できる印画紙まであります。これはどう使うかというと、以前紹介したこれです。

■HARMAN TiTAN ピンホールカメラ

 
 
カメラに直接印画紙を入れて撮影。現像すればポジ写真が得られるというわけです。このカメラは、ダイレクトポジティブペーパー、フィルム、印画紙とセットで販売されています。

 

 
 

ネガ/ポジによる写真術は1839〜40年にイギリスのタルボットにより発明されましたが、イルフォードの創業はその40年後の1879年。最初から写真乾板の会社としてスタートしました。会社としてのILFORDは2004年に破綻しましたが、その後、イルフォード創設者の名を冠した新会社HARMAN technologyにブランドは引き継がれています。

HARMAN社は、”ILFORD”の名前を安易に利用することなく、イルフォード製品だけに使用し続けています。イギリスで生まれてイギリスで守られている写真製品がイルフォードです。文化と見識ですね。

 

ILFORD ブランドサイト

ILFORD
 

 


■ILFORD PLUSシリーズ PANF, FP4, HP5

 

 

 
 
 
 
 
おお。この「モノクロフィルム編」を始めて以来、これだけ充実したラインナップを紹介できるのは初めてです。ありがとうイルフォード。

さて、このPLUSシリーズは旧型乳剤のフィルムです。トーン再現の安定感と、現像に対する反応の良さは非常に定評があります。感度別のラインナップも嬉しいところですが、なかでも出色はPANF(感度50)。素晴らしい精細感、豊かで美しいディテール、絵画的なコントラスト。もしKODAK Tri-Xで満足できない人がいたら、イルフォードPLUSシリーズはテストしてみる価値があると思います。

またイルフォードは大型のシートフィルムの受注生産を続けていることでも知られています。FP4とHP5は20インチx24インチ(50.8cm x 61cm)までラインナップがあります。年に一度程度、受注会がアナウンスされています。

 
©Kenshi Daito
ILFORD FP4

 

 
©Kenshi Daito
ILFORD PANF

 

  • フィルム感度とサイズ
    • 50、125、400
    • 35mm、120サイズ、シート サイズの詳細は下記リンク参照
  • データシート(PDF)

 

 

 

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■ILFORD DELTAシリーズ 100, 400, 3200

 

 

 
イルフォードDELTAシリーズは、KODAKのTMAXや富士フィルムのACROSSと同様のT粒子技術が使われています。超微粒子、超シャープネス。このラインナップで目を引くのはやはりDELTA3200ですね。現在市販されているモノクロフィルム中で最高感度。コントラスト上昇が抑えられているため、光量が厳しい条件下でも連続したトーンの美しい写真が撮影できます。

 

*
Stephan Ohlsen @Flickr
ILFORD DELTA 3200
 
 
 
 
 
 
 

 

■ILFORD SFX 200

イルフォードSFXは赤外線領域近くまで感光性があるフィルムです。近赤外線域のピークは720nmで740nmまで感光性があります。通常のフィルムが写せる限界の650nmは「黒いような赤」ですが、700nmを超えると肉眼ではだんだん見えにくくなってきます。光は波長が長いほど錯乱しにくくなるので、赤〜近赤外線の光で撮影すると遠景が非常にシャープに写ります。

通常の露出計では正確な感度が計れないため、テスト撮影をおすすめします。また、ピントがずれるので注意。赤外線フィルム用のピント位置は、たいていのレンズのピントリングに記されています。また赤外線写真風を狙うには、撮影時に濃い赤色のフィルターが必要になります。

 

Borgmästarefjärden
darksida@Flickr
ILFORD SFX 200
 

 

  • フィルム感度とサイズ
    • 200
    • 35mm、120サイズ
  • データシート(PDF)
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■ILFORD XP2 super

 

 

Kodak BW400CNと同様にカラーネガ処理をするモノクロフィルムです。このタイプのフィルムでは、このXP2が最も早く発売されたと思います。ASA400という高感度でありながら、広いラチチュード、豊かな階調、高いシャープネスと、従来考えられなかった画質で登場しました。1絞り分程度なら増減感の必要がないほどレンジに余裕があるため、露出ミスにも許容があり、現像も町の写真屋さんに簡単に頼めるため、初心者でも高画質のモノクロ写真が撮れるフィルムです。ただ、銀塩モノクロ写真の美しい画質を追求するなら、XP2のトーンにはキャラクターが乏しいのも事実です。

 

©Kenshi Daito
ILFORD XP2

 

  • フィルム感度とサイズ
    • 400
    • 35mm、120サイズ
  • データシート(PDF)
 
イルフォード XP2 スーパー 135 36枚撮り
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■ILFORD ORTHO PLUS

 
超細密描写が可能なコピーフィルム。現像方法によって、トーンを無くして線描画だけにすることもできます。もちろん通常の写真のように連続したトーン再現も可能。オルソフィルムなので、青や緑の光にしか感光しません。つまり赤色セーフライト下での取り扱いが可能なので、暗室で現像プロセスを目視しながら作業できます。オルタナティブ・プロセス用の密着ネガの作成用途にも最適です。また、このフィルムでポートレートを撮影すると、肌の調子が、赤色に感光しないオルソフィルム独特のトーンに再現されます。

 

 

 

  • フィルム感度とサイズ
    • 80(デイライト)、40(タングステン)
    • シート (4×5、8×10)
  • データシート(PDF)

 


■Kentmere 100, 400

 
 
 
Kentmere(ケントメア)もイルフォードと同様に100年以上前にイギリスで創業した会社です。写真材料、なかでもモノクロ印画紙がよく知られています。2007年にHARMAN technology社に買収されました。現在、ケントメアの名前で出ているフィルムは2種類。このフィルムについてはあまりよく知らないのですが、Diafineなどの2浴式現像液と相性が良いようなので、Tri-Xなどと同様の旧型乳剤の安定したフィルムだと思います。
 
 
 
 

 

 

 
 

銀塩写真の最近の情報をまとめるシリーズ、モノクロフィルム編。
前世紀の遺物。風前のともし火。なんとでも言え。どっこい生きてます。
さすらいのヨーロッパ編。
ヨーロッパでは、かつての名フィルムたちが製造中止と再生産をくりかえしています。
次回はドイツRollei/ Maco

 


「銀塩写真を始めたい人へ」記事は、ぼちぼち更新していきます。
現在入手可能なもので銀塩写真を始められるように情報をまとめていきます。(簡単にね)

フィルムカメラ編に続くフィルム編。
まずは現在入手可能なモノクロフィルムを全て紹介します。
それから、フィルム現像編プリント編(銀塩印画紙、デジタル)
とぼちぼちと続く予定です。

ではでは。

 
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