銀塩写真を始めたい人へ:モノクロフィルム編 #2 富士フィルム/ FUJIFILM NEOPAN100 ACROS

 もしかすると、いまどき銀塩写真を始めたいひとがいないとも限らない。

万が一、そんな人がいた場合に備えて最近の銀塩写真情報をぼちぼちとまとめていきます。

カメラ編に続きフィルム編。それもモノクロフィルム。
風前のともし火と言われはや10年余。名を変え、国を変え、しぶとく生き続けています。I’m still STANDING!!
 

モノクロフィルム、まだ買えます。買えますとも。今回は我らが富士フィルム!


 

★写真用モノクロフィルムの現状

 

そもそもカラーフィルムが普及した時点で、モノクロ(白黒)フィルムはまだ必要なのか?という議論もあったのではないかと思います。しかし、白黒フィルムはカラー時代を生き抜きました!それは、カラーフィルムをモノクロ画像にするよりも、最初からモノクロフィルムで撮影した方がだんぜんきれいだったからです。

デジタル時代にも同じことが言えるとは思うのですが、デジカメにフィルムを入れて撮影するわけにいかないので、フィルムカメラが衰退するとともにフィルム生産も大幅縮小されました。しかしモノクロフィルムはこのまま無くなるのか、と思いきや、国を変え、会社を変え、工場を変えて、多くのモノクロフィルムの生産はまだ続いています。

 

 

富士フィルム/ Fujifilm “お正月を写そう

20世紀後半、世界の映像市場でKodakとしのぎを削った富士フィルム。
写真、映画用フィルムの国産化に最初に成功した会社ですが、そのきっかけは、戦前にKodakに業務提携(&技術移植)を打診したが断られたことだったそうです。

ともあれ20世紀後半はそのKodakと並ぶメーカーとして認知されるようになりました。写真用モノクロフィルムはロングセラー「ネオパンSS」が1952年に発売され、アマチュア写真の拡大に貢献しました。KodakのTri-Xよりも前に発売されていたんですね!

 
富士フィルムが発行していたアマチュア向け雑誌

しかしネオパンSSは2012年に販売終了しました。
デジタル時代になり経営破綻したKodakに比べて、富士フィルムはうまく経営を転換したと言われています。実際、最近の富士フィルムのコピーは、こんな感じです。

化粧品も、薬もつくる。月面探査にも行く。
富士フィルムは、生まれ変わった。 

 しかし、愛が少し足りなくないですか?愛だけで食ってけないのは分かりますが、愛がないと生きていけないのもまた事実。富士フィルムは最近、ひっそりと映画用フィルムの生産も終了しました。かたやKodak。映画フィルム生産終了の憂き目に、タランティーノ他、ハリウッドの名士たちが全面バックアップして、工場閉鎖の危機をまぬがれました。なんという映画愛!

 

そんなわけで富士フィルムのモノクロフィルムのラインナップは、いまとても寂しいことになっています。国産のモノクロフィルムはこれが最後です。愛、ほしいです。みなさんの、愛を。

  
 

Fujifilm NEOPAN100 ACROS(ネオパン100アクロス)

 
 
現状、富士フィルムから発売されているモノクロフィルムは、このNEOPAN100 ACROS一種類だけです。これは2011年に発売された最新の乳剤技術を使ったフィルムです。その名もSuper FIne-Σ粒子技術。えらい名前ですが、富士フィルム版の最新「T粒子」です。
 

モノクロフィルムのラインナップで、このフィルムだけを残したことからも、富士フィルムの実利主義と、そうしないと生き残れない世知辛さの両方が感じられます。というのも、このNEOPAN100 ACROSだけは、その性能がデジタル写真に勝っているからです。その他のすべての旧型フィルムは、優位性がないとして切り捨てられてしまいました。

おそらくNEOPAN100 ACROSの使用状況としては、天体写真や顕微鏡写真といった科学分野が想定されているのではないでしょうか。もちろん、風景やポートレートといったふつうの写真にも使えるのですが、一般的な題材を対象にする場合はデジタル写真との画質の差をどうつけるか難しいかもしれません。とはいえ、微粒子、高精細、広いラチチュードを楽しむことはできます。

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Neopan100 Acros  Thom @Flickr

このフィルムの特徴的なスペックを見ていくと、まず優れた相反測不軌特性が目につきます。相反測不軌特性とは長時間露光をするとフィルムの感度が下がる性質のことですが、NEOPAN100 ACROSはこれが非常に改善されています。一般的な旧型フィルムだと露光時間が1分以上になると2絞り分ほど感度が下がるりますが、NEOPAN100 ACROSは露光時間2分まで調整不要。これは暗い場所で写真を撮ることが多い人には助かります。露出の計算が楽で確実です。

それから、深い赤は黒く写ります。というか写りません(オルソパンクロマチック)。
風景用に濃い赤色フィルターを使用した場合は、感度が下がる可能性があるので注意が必要です。黄色〜オレンジフィルターくらいにとどめておいた方が無難かもしれません。

撮影できる明暗の幅(ラチチュード)は約10絞り分以上と非常に広いのですが、最近のデジタル撮影機器にはラチチュードが13絞り分に匹敵するものもあります。そのため、単なる性能比較では、NEOPAN100 ACROSがデジタル写真に圧倒的に優位性があるとまでは言えなくなってきています。

やはりモノクロフィルム写真は、その独特の美しさを引き出すことに意義があると思います。NEOPAN100 ACROSは現像に対する安定性も優れています。しかしこれは裏を返せばフィルム現像によるトーン調整がやりにくいということです。この点では、旧型フィルムのほうが銀塩写真らしさを表現するうえでは優れていました。

もう望めないことなのかもしれませんが、ネオパンSS等の旧型フィルムの復活を願ってやみません。名フィルムの存続は写真文化の証でもあると思います。

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Neopan100 Acros  dan-morris @Flickr

 

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銀塩写真の最近の情報をまとめるシリーズ、モノクロフィルム編。
前世紀の遺物。風前のともし火。なんとでも言え。どっこい生きてます。
次回からは、さすらいのヨーロッパ編です。
ヨーロッパでは、かつての名フィルムたちが製造中止と再生産をくりかえしています。
まずは世界初の現像液を販売したドイツのAgfaのフィルムから。

 


「銀塩写真を始めたい人へ」記事は、ぼちぼち更新していきます。
現在入手可能なもので銀塩写真を始められるように情報をまとめていきます。(簡単にね)

フィルムカメラ編に続くフィルム編。
まずは現在入手可能なモノクロフィルムを全て紹介します。
それから、フィルム現像編プリント編(銀塩印画紙、デジタル)
とぼちぼちと続く予定です。

ではでは。

 


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