最新更新:2021年6月17日

もしかすると、いまどき銀塩写真を始めたいひとがいないとも限らない。

万が一、そんな人がいた場合に備えて最近の銀塩写真情報をぼちぼちとまとめていきます。カメラ編に続きフィルム編。それもモノクロフィルム。風前のともし火と言われはや10年余。名を変え、国を変え、しぶとく生き続けています。
I'm still STANDING!!

モノクロフィルム、まだ買えます。買えますとも。今回は伝統のヨーロッパからAGFA!

 

 

写真用モノクロフィルムの現状

そもそもカラーフィルムが普及した時点で、モノクロ(白黒)フィルムはまだ必要なのか?という議論もあったのではないかと思います。しかし、白黒フィルムはカラー時代を生き抜きました!それは、カラーフィルムをモノクロ画像にするよりも、最初からモノクロフィルムで撮影した方がだんぜんきれいだったからです。

デジタル時代にも同じことが言えるとは思うのですが、デジカメにフィルムを入れて撮影するわけにいかないので、フィルムカメラが衰退するとともにフィルム生産も大幅縮小されました。しかしモノクロフィルムはこのまま無くなるのか、と思いきや、国を変え、会社を変え、工場を変えて、多くのモノクロフィルムの生産はまだ続いています。

AGFA

 

21世紀に入り、破産、解散を繰り返しながらもなお生き続けるAGFA。設立は1867年!ドイツはベルリン郊外で、化学薬品メーカーとして始まりました。ドイツロマン派の作曲家メンデルスゾーンの息子、パウルはAGFA設立者のひとりです。

AGFAの名を写真史に刻んだ最初の製品は、現像液「Rodinal(ロジナール)」。1891年に発表され、なお現在も発売され続けています!非常に高いシャープネス。ドラマチックな先鋭感。銀塩写真史の陰のヒーローと呼ぶべき名現像液です。

冷戦期にドイツが東西に分かれたことにより、Rodinalも東側と西側にそれぞれレシピが分かれました。そのためRodinalは、現在、RodinalとR09という2つの名前で存続しています。

オリジナルのRodinalのレシピは公開されており、自家調合も可能です。
PHOTOGRAPHER'S FORMULARY RODINAL (PDF)

 

 

AGFAはその後、世界に先がけてカラーフィルムの開発に成功し、写真と映画用にカラーフィルムを提供しました。小津安二郎が晩年のカラー作品にAGFAのフィルムを選んだことは有名です。

AGFAは個性的なモノクロフィルムも製造していましたが、それらの多くは販売終了しました。現在は同じ製法のフィルムがRolleiブランドで販売されています。しかし中身が同じフィルムでも再発売される度に名前が変わることが多いので、調べるのがなかなかたいへんです。

 

現在のAGFAブランド

 

ところで「アグファ」を名乗るべきアグファ・ゲバルト社は、すでに写真事業からは撤退しています。現在、「アグファ」を継承しているのはアグファフォト・ホールディングです。ですがしかし、アグファとアグファフォトは、実質的にほぼ関係のない別の会社だということです。

アグファフォトは、アグファからフィルムの製法も引き継いでいるということですが、実際面では不明です。むしろアグファの銀塩モノクロフィルムの遺産は、RolleiブランドやAdoxへと確実に引き継がれているようです。

 


 

AGFA APX 100, 400(new emulsion)/アグファフォト

 

さて、現在APXの名前で発売されているモノクロフィルムは、APX100、400のみです。かつてのAPXは、安定した品質と、フィルム現像に対する反応の良さが特徴的な、評価の高いフィルムでした。乳剤のタイプは旧型なので、Rodinalなどの古典的な現像液との相性は非常にすばらしいものがありました。しかし人気の高かったAPXフィルムも、AGFAの解散にともない販売を終了しました。  

このAPX100, 400(新乳剤)は、2013年に発売が始まった新しいフィルムです。AGFA APXの名を冠しているものの、かつてのAPXとは乳剤の設計が異なるフィルムのようです。(かつての旧APX100は、その後、Rollei Retro100の名前で販売されていましたが、現在は製造されていません。)  

■FilmPhotography.eu (APX100、400のレビュー記事・ドイツ語)
AgfaPhoto APX 100 New und APX 400 New im Test

かつてのAPX100に相当するフィルムを求めるのなら、この新APXではなく、他のフィルムを探す方がいいようです。アナログ写真関連ショップSilversaltの店主ティムは、Adox Silvermaxをおすすめしています。Silvermaxは旧APX100をベースに改良されたフィルムです。

 

100フィート巻

 

  • フィルム感度とサイズ
    • 100、400(35mm)
  • データシート
    • 未公開

銀塩写真の最近の情報をまとめるシリーズ、モノクロフィルム編。
前世紀の遺物。風前のともし火。なんとでも言え。どっこい生きてます。
さすらいのヨーロッパ編。
ヨーロッパでは、かつての名フィルムたちが製造中止と再生産をくりかえしています。
次回はイギリスILFORDとKentomere。


いま買える写真用白黒フィルムの最新リストを公開しています!

写真用白黒フィルム全リスト:各年度版

 


 

ほんとうにかっこいいアナログ写真ワークショップ

 

東京オルタナ写真部では、アナログ写真ワークショップを開催しています。かっこいい写真表現のための技法を合理的に解説します。フィルムを初めて触るひとでも大丈夫。ご参加お待ちしています!

OUR WORKSHOP
 東京オルタナ写真部 ワークショップ 東京オルタナ写真では、写真作品制作のためのワークショップを開催しています。表現のためのアート(技法)を総合的に指導しています。  ワークショップ構成|技術とアート  私たちのワークショップでは、技術内容と芸術性をきちんと分離して扱います。そのために効率を悪化させる混乱が少なく、参加者はもっとも短い時間で高い目標を達成することができます。ワークショップは、技術系、アート、そして実践的な制作発表機会としてグループ展があります。  技術系ワークショップ ほんとう...

 

開催予定のワークショップ

開催予定のワークショップは「現在募集中のワークショップ」のページをごらんください。

 

フィルム:Rollei RPX400 現像液:ADOX FX39
ワークショップ撮影実習にて
©東京オルタナ写真部

 

 


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東京オルタナ写真部では、オリジナルフィルム現像液「東京パイロ Tokyo Pyro」を開発しました。ありきたりな画になる要素を排し、アナログ写真ならではの美しい画に全振りしたフィルム現像液です。

世界の写真コミュニティで話題の最新現像液「510 Pyro」よりも、はるかに美麗な画像を得ることができます。

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東京オルタナ写真部ショップ:東京パイロ

 

東京パイロ 詳細ページ

東京パイロについてより詳しい解説は次のページ「オリジナルフィルム現像液 |東京パイロ TOKYO PYRO」をご覧ください。

オリジナルフィルム現像液 |東京パイロ TOKYO PYRO
現像液:東京パイロ フィルム:RPX100(35mm)東京パイロは、東京オルタナ写真部ショップにて好評発売中です!東京オルタナ写真部ショップオリジナルフィルム現像液 東京パイロ東京オルタナ写真部のオリジナル現像液「東京パイロ」をご紹介します。美しい画と使いやすさを両立した他にないキャラクターの現像液です。マイクや楽器の音質にこだわる音楽の世界では、大量生産の機材に満足できない人々は自ら機材を開発します。そのような小規模生産機材のこだわりの音は「ブティック・トーン」と呼ばれます。現像液「東京パイロ」は写真...


 

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