L.A.で人気のストリート・フォトグラファー、エリック・キムが、

「アンリ・カルティエ=ブレッソンが、ストリート写真について教えてくれる10のこと」

という記事をブログに書いている。

なかなか面白い内容なので、少しご紹介を。


オリジナルの記事はこちら。

Eric Kim
10 Things Henri Cartier-Bresson Can Teach You About Street Photography

Photo by Henri Cartier Bresson

まず、ここで言うストリート写真というのは、カメラを持ち歩いて撮るスナップ写真のこと。

それからブレッソンという人は、20世紀半ばに活躍した写真のビッグネームのひとり。

先日少し紹介したロバート・キャパと一緒に国際的な報道写真家組織「マグナム・フォト」を創設したことでも有名。いまドキュメンタリー写真と呼ばれている写真のスタイルはマグナムが作ったと言っていいほど、その後の写真に影響を及ぼした。

で、そのブレッソンは、カメラをぶら下げてぷらぷら歩きながら撮る写真が好きだった。
「決定的瞬間」という彼の言葉はあまりにも有名だが、それは大事件が発生する場に居合わせるということではなく、何気ない日常が画になる瞬間、というくらいの意味だと思う。

Photo by Henri Cartier Bresson

エリックが言う「ブレッソンがストリート写真について教えてくれる10のこと」とは以下の通り。


1. 幾何学的な構図を見つけること
2. 待つこと
3. 旅すること
4. レンズはひとつだけにすること
5. 子供の写真を撮ること
6. 控えめな態度でいること
7. 画家の目で世界を見ること
8. トリミングしないこと
9. 撮影後の処理にこだわらないこと
10. さらに良いものに向かって努力すること

エリックは、なかなか良いポイントを取り出していると思う。
9番以外はだいとうも賛同できる。

9番はなぜ同意できないかというと、ブレッソンが撮影後の処理にこだわらずに済んだのは、センスのよい現像技師がいたから。完成した写真をイメージしながら写真を撮らないと、ただ写っているだけの写真しか撮れない。たとえブレッソンが写真を自分で現像しなかったとしても、完成した写真のイメージを持たずに撮影したとは思えない。だからここは、エリックが言うのとは少し反対の意味の
「写真になった画像をイメージすること」
とするのがいいんではないだろうか。

Photo by Henri Cartier Bresson

だけど、あとはどれもエリックの言う通りだと思う。
特に、以下の4つは本当に大切。エリック、よく言った。えらい。

2. 待つこと

3. 旅すること

4. レンズはひとつだけにすること

6. 控えめな態度でいること

待つこと。そして、控えめな態度でいること。
耐えて待たないと写真は撮れない。
それから、レンズを人に向けるのはとても攻撃的な行為だ。それを忘れてはいけない。

だいとうは以前、外国人がほとんど来ないような土地で写真を撮ったとき、まず地元のガイドにここで写真を撮影していいか確認して、それからそこの住人が警戒しなくなるまで、小一時間何もせず、ただ、にこにこ立っていたことがある。
それから1枚だけ写真を撮った。誰も気づかなかった。
「お前のような正しいふるまいをするツーリストを見たのは初めてだ。」と後でガイドに感心された。

Photo by Henri Cartier Bresson

そして、「レンズはひとつだけにすること」。
これはズームレンズのことじゃない。
単焦点のレンズがひとつだけ。
だいとうが以前にも書いたけれど、写真でプロ仕事をするのでなければ、レンズは単焦点が1本だけあればいいと思う。むしろそのほうが写真がうまくなるし、いい写真が撮れる。
(ブレッソンが味方についたので、少し調子に乗っている。)

Photo by Henri Cartier Bresson

調子に乗りついでに、エリックのブログから、ここだけ下手な翻訳をしてみる。

4. レンズはひとつだけにすること

アンリ・カルティエ-ブレッソンは、マグナムの仕事ではいくつかのレンズを使って撮影したけれど、彼自身のための撮影のときには、50mmレンズしか使わなかった。何十年もの間、そのレンズだけを使い続けたから、カメラは本当に「もうひとつの彼の目」になったんだ。

あなたが外に出て写真を撮るときにも、同じ考え方をしてほしい。たしかにぼくは、世界をいろんなふうに見てみるために、他の人にはいろんな焦点距離のレンズを使うことを勧めたりする…だけど結局のところ、ひとつのレンズだけにこだわるほうが、芸術的なビジョンを固める役に立つんだ。そうすれば、ふだんの生活の中でも、自然とカメラのフレーミングができるようになるし、撮影する距離や構図によって、それがどんな写真になるか、確実にわかるようになるんだ。

たしかにその通りだよ、エリック。
だいとうも、ほんとうにそう思うよ。