写真フィルム選びのひとつの見方

 

アナログ写真ブームと呼ばれる昨今、初めてフィルムカメラを手にするひともいるかと思います。カメラ選びはこちらの記事「厳選!!おすすめフィルムカメラ 」を参考にしていただくとして、今日のトピックはフィルムです。

フィルムもたくさんの種類があります。現在入手可能な白黒写真フィルムの一覧はこちら!

いま買える写真用白黒フィルムの最新リストを公開しています!

写真用白黒フィルム全リスト:各年度版

さてしかし、これだけフィルムがあるとどれを選べばいいのかよくわからない。もちろん自分が気に入ったフィルムを選んで使えばいいのですが、もうひとつのフィルム選びの指標を考えてみたいと思います。

 

写真フィルム。どうやって作る?

 

ところで少し想像してみてほしいのですが、そもそも写真フィルムを作るにはいったい何が必要でしょう?

写真乳剤の研究施設。乳剤を製造する化学設備。フィルムをコーティングする機械。フィルムをカットしてパーケージする設備。それらを全部ひっくるめた会社と工場がまるまる必要です。もちろん写真乳剤を開発する研究者や技術者や機械を操作する技師を雇う必要もあります。

ADOXの写真乳剤研究 adox.de

 

Adox フィルムコーティング工程 adox.de

そして実は、写真フィルム製造にこれだけの投資をしている会社はそれほど多くありません。いくつかの製造メーカーだけです。しかし現在、独自の銘柄のフィルムを販売しているのは、企業から個人ブロガーまで、大小様々な業者がいます。ということは、自前ではフィルムを製造してない販売主もいるということです。

写真フィルムを製品化するためにもっともコストがかかるのは、開発です。なかでもフィルムの性能を決定づける写真乳剤の開発は、もっとも投資のリスクが高い分野です。そのため販売主が企業であったとしても、新しいフィルムの開発コストまで負担することはまずありません。フィルム開発への投資、製造設備投資のリスクを負っているのは、おおむね製造メーカーなのです。

 

写真フィルム製造メーカーと販売業者の関係

 

製造メーカー以外の業者が販売している写真フィルムは、ほとんどの場合、既存の写真フィルムを流用したものです。つまりメーカーがかつて製造販売していたフィルムを、別の名前でパッケージして販売しています。

たとえばMaco(マコ)が販売しているRollei(ローライ)ブランドのフィルムがそれにあたります。Rolleiブランドのフィルムを製造しているのはAgfa(アグファ)などのメーカーです。Rolleiブランドで販売されているフィルムの多くは、かつてAgfaが製造販売していたフィルムをアレンジしたものです。

ややこしいので改めて整理しておくと、Rolleiはご存知のようにカメラメーカーです。フィルムは製造していません。Maco社が名前を使う権利をRolleiから購入し、Agfaなどのフィルムに名前をつけて販売しているのが、Rolleiブランドのフィルムです。1)RolleiシリーズのすべてがAgfaの製造ではなく、RPXシリーズはイルフォードのハーマンテクノロジー製だと言われています。しかし、詳しいことは一般ユーザーにはわかりません。これもMaco社が製造メーカーではないからですね。

最新更新日:2022年2月10日もしかすると、いまどき銀塩写真を始めたいひとがいないとも限らない。万が一、そんな人がいた場合に備えて最近の銀塩写真情報をぼちぼちとまとめていきます。カメラ編に続きフィルム編。それもモノクロフィルム。風前のともし火と言われはや10年余。名を変え、国を変え、しぶとく生き続けています。I'm still STANDING!!モノクロフィルム、まだ買えます。買えますとも。今回はドイツの謎多きブランドRollei。 写真用モノクロフィルムの現状 そもそもカラーフィルムが普及した時点で、モノクロ(白黒...

 

Maco社は、Rolleiシリーズのフィルムの一部がAgfa製であることを公表しています(Agfa以外の製造元は非公表)。ではフィルムを製造していない他の販売主の場合はどうでしょうか。どこから、どんな写真フィルムを調達しているのでしょうか。

それは…わかりません。ほとんどの販売主はフィルムの素性を明らかにしていません。権利的な問題でフィルムの中身を明かせないのかもしれませんし、あるいは他の事情があるのかもしれません。

確実なのは、製造メーカー以外の業者がまったく新しいフィルムを開発して製品化することは、まずあり得ないということです。新しいフィルムが発売されても、製造メーカーのものでない限り、それは必ず他の既存フィルムを名前と箱を変えて転売したものです。

 

写真文化を下支えしているフィルム製造メーカー

 

ともあれ、写真フィルム製造に実際に投資し、そのリスクをもっとも負っているのは、製造メーカーなのです。フィルムにせよ印画紙にせよ、アナログ写真とは写真乳剤のことです。アナログ写真文化を下支えしているのは、写真乳剤を製造しているメーカーだと言えます。

製造メーカーが販売している写真フィルムを使うメリットは、品質が高く、安定して供給されるということがあります。もしフィルム選びに迷ったときは、製造メーカーの商品かどうかを気にしてみるのもひとつの選択の仕方かと思います。

日本でもっともアナログ写真に詳しい写真ショップSilversalt。店主のティム・モーグが『アサヒカメラ』のインタビュー記事で最近の銀塩写真フィルム事情を話しています。関心のある方はぜひ読んでみてください。

 


 

余談ですが、かくいう私もかつて、アメリカにあったJ&Cという写真ショップが販売していた「Classic pan」という身元不明のフィルムを大量に買い込んで使っていました。しかしJ&Cは閉店しフィルムはなくなってしまい、おかげでせっかく作った自分専用の現像データはすべて無駄になってしまいました!

「Classic pan」の素性はどのフィルムだったのか、製造メーカーはどこなのか、いまでも手に入るのか…と今日もまた真偽のしれない噂が飛び交うアナログ写真界隈なのです。

J&C ClassicPan 400

 


 

ほんとうにかっこいいアナログ写真ワークショップ

 

東京オルタナ写真部では、アナログ写真ワークショップを開催しています。かっこいい写真表現のための技法を合理的に解説します。フィルムを初めて触るひとでも大丈夫。ご参加お待ちしています!

 東京オルタナ写真部 ワークショップ 東京オルタナ写真では、写真作品制作のためのワークショップを開催しています。表現のためのアート(技法)を総合的に指導しています。  ワークショップ構成|技術とアート  私たちのワークショップでは、技術内容と芸術性をきちんと分離して扱います。そのために効率を悪化させる混乱が少なく、参加者はもっとも短い時間で高い目標を達成することができます。ワークショップは、技術系、アート、そして実践的な制作発表機会としてグループ展があります。  技術系ワークショップ ほんとう...

 

開催予定のワークショップ

開催予定のワークショップは「現在募集中のワークショップ」のページをごらんください。

 

フィルム:Rollei RPX400 現像液:ADOX FX39
ワークショップ撮影実習にて
©東京オルタナ写真部

 

 


オリジナルフィルム現像液 |東京パイロ TOKYO PYRO

東京オルタナ写真部では、オリジナルフィルム現像液「東京パイロ Tokyo Pyro」を開発しました。ありきたりな画になる要素を排し、アナログ写真ならではの美しい画に全振りしたフィルム現像液です。

世界の写真コミュニティで話題の最新現像液「510 Pyro」よりも、はるかに美麗な画像を得ることができます。

デジタルでは代替できないアナログの魅力を最大に活かす、最先端フィルム現像液。東京オルタナ写真部ショップで好評販売中です!

 

東京パイロ 販売ページ

東京オルタナ写真部ショップ:東京パイロ

 

東京パイロ 詳細ページ

東京パイロについてより詳しい解説は次のページ「オリジナルフィルム現像液 |東京パイロ TOKYO PYRO」をご覧ください。

現像液:東京パイロ フィルム:RPX100(35mm)東京パイロは、東京オルタナ写真部ショップにて好評発売中です!東京オルタナ写真部ショップオリジナルフィルム現像液 東京パイロ東京オルタナ写真部のオリジナル現像液「東京パイロ」をご紹介します。美しい画と使いやすさを両立した他にないキャラクターの現像液です。マイクや楽器の音質にこだわる音楽の世界では、大量生産の機材に満足できない人々は自ら機材を開発します。そのような小規模生産機材のこだわりの音は「ブティック・トーン」と呼ばれます。現像液「東京パイロ」は写真...

脚注

脚注
1RolleiシリーズのすべてがAgfaの製造ではなく、RPXシリーズはイルフォードのハーマンテクノロジー製だと言われています。しかし、詳しいことは一般ユーザーにはわかりません。これもMaco社が製造メーカーではないからですね。