アナログ写真文化を支えるフィルム製造メーカー

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写真フィルム選びのひとつの見方

 

アナログ写真ブームと呼ばれる昨今、初めてフィルムカメラを手にするひともいるかと思います。カメラ選びはこちらの記事「厳選!!おすすめフィルムカメラ 」を参考にしていただくとして、今日のトピックはフィルムです。

フィルムもたくさんの種類があります。現在入手可能な白黒写真フィルムの一覧はこちら

銀塩写真を始めたいひとへ:白黒フィルム全部紹介!銀塩白黒フィルム。 風前のともし火と言われはや10年余。名を変え、国を変え、しぶとく生き続けています。I'm still STANDING!!モノクロフィルム、まだ買えます。買えますとも。2019年、いま買える写真用白黒...

 

さてしかし、これだけフィルムがあるとどれを選べばいいのかよくわからない。もちろん自分が気に入ったフィルムを選んで使えばいいのですが、もうひとつのフィルム選びの指標を考えてみたいと思います。

 

写真フィルム。どうやって作る?

 

ところで少し想像してみてほしいのですが、そもそも写真フィルムを作るにはいったい何が必要でしょう?

写真乳剤の研究施設。乳剤を製造する化学設備。フィルムをコーティングする機械。フィルムをカットしてパーケージする設備。それらを全部ひっくるめた会社と工場がまるまる必要です。もちろん写真乳剤を開発する研究者や技術者や機械を操作する技師を雇う必要もあります。

ADOXの写真乳剤研究 adox.de

 

Adox フィルムコーティング工程 adox.de

そして実は、写真フィルム製造にこれだけの投資をしている会社はそれほど多くありません。いくつかの製造メーカーだけです。しかし現在、独自の銘柄のフィルムを販売しているのは、企業から個人ブロガーまで、大小様々な業者がいます。ということは、自前ではフィルムを製造してない販売主もいるということです。

写真フィルムを製品化するためにもっともコストがかかるのは、開発です。なかでもフィルムの性能を決定づける写真乳剤の開発は、もっとも投資のリスクが高い分野です。そのため販売主が企業であったとしても、新しいフィルムの開発コストまで負担することはまずありません。フィルム開発への投資、製造設備投資のリスクを負っているのは、おおむね製造メーカーなのです。

 

写真フィルム製造メーカーと販売業者の関係

 

製造メーカー以外の業者が販売している写真フィルムは、ほとんどの場合、既存の写真フィルムを流用したものです。つまりメーカーがかつて製造販売していたフィルムを、別の名前でパッケージして販売しています。

たとえばMaco(マコ)が販売しているRollei(ローライ)ブランドのフィルムがそれにあたります。Rolleiブランドのフィルムを製造しているのはAgfa(アグファ)などのメーカーです。Rolleiブランドで販売されているフィルムの多くは、かつてAgfaが製造販売していたフィルムをアレンジしたものです。

ややこしいので改めて整理しておくと、Rolleiはご存知のようにカメラメーカーです。フィルムは製造していません。Maco社が名前を使う権利をRolleiから購入し、Agfaなどのフィルムに名前をつけて販売しているのが、Rolleiブランドのフィルムです。1)RolleiシリーズのすべてがAgfaの製造ではなく、別の製造メーカーのフィルムも含まれているそうです。しかしそれが、どこのメーカーのどのフィルムなのか、詳しいことは一般ユーザーにはわかりません。これもMaco社が製造メーカーではないからですね。

もしかすると、いまどき銀塩写真を始めたいひとがいないとも限らない。万が一、そんな人がいた場合に備えて最近の銀塩写真情報をぼちぼちとまとめていきます。カメラ編に続きフィルム編。それもモノクロフィルム。風前のともし火と言われはや10年余。名を変え、国を...

 

Maco社は、Rolleiシリーズのフィルムの一部がAgfa製であることを公表しています(Agfa以外の製造元は非公表)。ではフィルムを製造していない他の販売主の場合はどうでしょうか。どこから、どんな写真フィルムを調達しているのでしょうか。

それは…わかりません。ほとんどの販売主はフィルムの素性を明らかにしていません。権利的な問題でフィルムの中身を明かせないのかもしれませんし、あるいは他の事情があるのかもしれません。

確実なのは、製造メーカー以外の業者がまったく新しいフィルムを開発して製品化することは、まずあり得ないということです。新しいフィルムが発売されても、製造メーカーのものでない限り、それは必ず他の既存フィルムを名前と箱を変えて転売したものです。

 

写真文化を下支えしているフィルム製造メーカー

 

ともあれ、写真フィルム製造に実際に投資し、そのリスクをもっとも負っているのは、製造メーカーなのです。フィルムにせよ印画紙にせよ、アナログ写真とは写真乳剤のことです。アナログ写真文化を下支えしているのは、写真乳剤を製造しているメーカーだと言えます。

製造メーカーが販売している写真フィルムを使うメリットは、品質が高く、安定して供給されるということがあります。もしフィルム選びに迷ったときは、製造メーカーの商品かどうかを気にしてみるのもひとつの選択の仕方かと思います。

日本でもっともアナログ写真に詳しい写真ショップSilversalt。店主のティム・モーグが『アサヒカメラ』のインタビュー記事で最近の銀塩写真フィルム事情を話しています。関心のある方はぜひ読んでみてください。

 


 

余談ですが、かくいう私もかつて、アメリカにあったJ&Cという写真ショップが販売していた「Classic pan」という身元不明のフィルムを大量に買い込んで使っていました。しかしJ&Cは閉店しフィルムはなくなってしまい、おかげでせっかく作った自分専用の現像データはすべて無駄になってしまいました!

「Classic pan」の素性はどのフィルムだったのか、製造メーカーはどこなのか、いまでも手に入るのか…と今日もまた真偽のしれない噂が飛び交うアナログ写真界隈なのです。

J&C ClassicPan 400

脚注   [ + ]

1.RolleiシリーズのすべてがAgfaの製造ではなく、別の製造メーカーのフィルムも含まれているそうです。しかしそれが、どこのメーカーのどのフィルムなのか、詳しいことは一般ユーザーにはわかりません。これもMaco社が製造メーカーではないからですね。
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