銀と塩:銀塩写真の色

ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボット邸 Lacock Abbey ©Kenshi Daito

銀色でもないのに銀塩写真って呼ぶの変じゃない?というお話です。

銀塩写真は銀色じゃない?

銀です。銀。銀って何色ですか?
銀色!正解!

アフリカ、ニジェールのトアレグ族の銀細工
Les croix touarègues

…じゃあ白黒のアナログ写真が「銀塩」ってなんで?銀色どこ?

アナログ写真が「銀塩」写真と呼ばれる理由は、金属の銀を使うことによります。銀は、フィルムや印画紙の表面にゼラチンに混ぜ込まれて塗布されています。でも銀色ではありません。白黒です。

日常的には、銀に限らず金属の色は「銀色」や「金色」などの金属光沢として馴染み深いわけです。しかし金属はナノサイズの微粒子になると様々な色を帯びるようになります。金属粒子はステンドグラスなどのガラスの色つけなどにも使われます。

紫:マンガン+銅、コバルト
青 :コバルト、銅
黄 :銀、ニッケル、クロム、カドミウム
黄赤 :セレン+カドミウム
赤 :金、銅、コバルト、セレン+カドミウム
赤紫 :ネオジム、マンガン

(参考:ガラスの知識/ガラスの色

また同じ金属粒子でもサイズによって色が変わります。これは粒子の大きさによって、吸収する光の波長が変化するためです。特定の波長を吸収された残りの光が、私たちが見る「色」になるわけです。

では白黒、つまり黒い色はどうやってできるのか。それは、いろいろなサイズの粒子が含まれる場合です。サイズがばらばらの銀粒子をまんべんなく混ぜ合わせて塗ると、様々な色の絵の具を混ぜたのと同じような状態になるため褐色から黒色になります。

銀+塩=銀塩

「銀塩」というのは銀の化合物、特に塩化銀の意味です。塩水を塗った紙に硝酸銀溶液を塗ると反応して紙の上に塩化銀の粒子ができます。塩化銀は紫外線にあたると金属の銀に戻ります。塩化銀の粒子には色がありませんが、金属の銀の粒子は褐色になります。

(参照:「ナノサイズの金属粒子で光と色を操る」立間徹・PDFファイル)

塩化銀に光があたると色が濃くなります。ですから、塩化銀を塗布した塩化銀紙をカメラに入れて撮影すると、明暗が反転したネガ画像になります。明暗が正しい画像にするには、このネガをもう一度、塩化銀紙の上に置いてプリントします。ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットはこの方法で写真を発明し、カロタイプと名付けました。

calotype

 

フィルムを使うカラー写真も銀塩写真の仕組みを応用しています。感光してできた銀を使って発色させ、最終的に銀は取り除きます。

映画では、カラーフィルムから銀を完全に取り除かずに彩度の低い画を作ることがあります。この「銀残し」は、名映画キャメラマン宮川一夫が最初に実用化したテクニックです。

映画『おとうと』(1960年) 市川崑監督 宮川一夫撮影
「銀残し」で色味を抑えて撮影された。
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