写真を教えない写真ワークショップをやってみた

 

先日、写真を教えないことにしたワークショップを開催しました。なぜそんなことをしたのか、少し紹介したいと思います。

 

 

写真ワークショップのジレンマ

 

東京オルタナ写真部では、白黒フィルムを使うアナログ写真のワークショップを開催しています。

写真のワークショップをやっていると、思いがけないことに気付かされることがありますが、そのなかでも、けっこう深刻なのがこれです。

 

写真の知識があることと、いい写真を撮れることは、実はそれほど関係がない(ように見える)

 

もちろん、知識が増えるほど写真が下手になる、などと言いたいわけではありません。しかし実際にワークショップを開催していると、写真に詳しいひとほど撮影実習の結果が面白くないということが、しばしば起こります。

写真の知識を教えると逆効果になるかもしれないのだとしたら、これは教える側からすると、とんでもないジレンマです。いったい、写真の知識って何なのでしょうか。

 

写真を学びたいひとに、ほんとうに必要なこと

写真を学びたいひとに、ほんとうに必要なことは何だろうか。このことをずっと考え続けていましたが、自分ひとりで考えるよりも、相談したほうがいいように思えてきました。

そこで先日開催した「はじめてのアナログ写真ワークショップ」では、参加者のみなさんといっしょに内容を考えながら進めることにしました。

写真を学びたいひとにほんとうに必要なことは何か、当事者のみなさんにきいてみた!

初めてのアナログ写真ワークショップ
 ほんとうに初めての人のための、アナログ写真ワークショップ フィルム写真に関心を持つひとがふえてきていますが、いまいち踏み出せないという声もよく聞きます。 フィルム写真に興味はあるけれど経験がないし、難しそうどこから始めればいいのかわからない写真に詳しい人に教わるとなんだか怖そう内容についていけるか心配自分でちょっと撮ってみたけれど、なんかちがう…これじゃないフィルムで撮ると味のある写真になるってほんとうなの?ぶっちゃけ、フィルム写真ってインスタグラムのフィルターと何がちがうの? そんな声に...

 

 

はじめての、アナログ写真ワークショップ

写真初心者がほんとうに知りたいこと

さてワークショップの初回。まず最初に、写真の初心者と、初心者でないひとの違いを聞いてみました。

いろいろな答えがありましたが、だいたいまとめると、

  • 初心者ではないひとは、撮りたい写真を撮るための技術をもっている。

ということでした。
なるほど。まちがいない。

では次に、初心者向けのワークショップで具体的になにを教えればいいかを聞いてみました。答えは…

  • カメラの使い方
  • 機材の使い方
  • カメラ用語の説明、露出とかピントとか
  • 構図について

なるほど、これもまちがいない!

…いや、ほんとうか?

 

「写真のハウツー」はほんとうに必要だろうか?

さっきの質問の答えをよく見てみると、どれも「写真のハウツー」です。でもそれは「自分が撮りたい写真を撮るための技術」と同じものでしょうか?よく似ていますが、もしかすると全然ちがうものかもしれません

そこで参加者のみなさんに改めて聞いてみました。

「なにをしたくてこのワークショップに参加しましたか?」

すると、答えは、

  • 自分が撮りたい写真、いい写真を撮れるようになりたい

ですよね!それだけです。
撮りたい写真を撮れるようになりたい。それがいちばんの目的です。

それなら初心者が対象の写真ワークショップで最初にやることは「自分が撮りたい写真」を考えることのはずです。「写真のハウツー」が、いちばん大事ではないことは確かです。

 

@「はじめてのアナログ写真ワークショップ」

 

…でもこんな反論ができそうです。

「いやいや、まず技術を学んで、それから自分がやりたい写真作品が撮れるようになるんでしょう?だから写真のハウツーを学ぶことの方が先なのでは?」

 

うむ…ふつうはそう考えがちです。知識があって初めて作品を作れると。しかしよく考えてみると、決してそんなことはないはずです。まず目指したい作品のイメージが自分の中にあって、それを実現するのが技術のはずです。自分が作りたい作品のイメージは、常に技術に先行するはずです。

もしハウツーや技術が先なのだとしたら、それはきりがないので、いつまでたっても作品が始まらなくなってしまいます。

 

写真を知っている人ほど、面白い写真が撮れない。

こういうことが起こるのは、その人の中で写真の知識の方が、自分が作りたい作品のイメージより優先されているからではないでしょうか。

ですからこのワークショップでは、写真のハウツーにはまったくふれずに、写真でやりたいことを見つけることに極振りしました。写真の勉強ではなく、自分の作品をイメージすることに極振りです。

 

はじめての、写真を教えない写真ワークショップ

そうやって開催した「はじめてのアナログ写真ワークショップ」。最初に次のことだけは決めておきました。

  • ハウツーの解説をしない。
  • 資料を配らない。

資料を配らないのは「勉強」になることを避けるためです。これまでのワークショップでは、資料を配ったとたんに「勉強」が始まる雰囲気になってしまいました。そしてそうなると、なぜか自分で考えることが止まってしまいがちになります。

それにしても、これまで多くのワークショップを開催してきましたが、写真を教えないことにしたワークショップはこれがはじめてです。

 

初心者は、かっこいい写真しか撮ってはいけない。

このワークショップの撮影実習では、カメラと露出計の使い方だけ、ほんとうに最低限のことだけをそれぞれの人に説明しました。露出のミスに強いフィルムを持って、いざ撮影へ。

撮影実習にあたって注意事項はひとつだけ。

かっこいい写真を撮ってください。かっこいい写真しか撮らないでください。」

試し撮り禁止。フィルムの全コマ、本気のかっこいい写真しか撮っちゃだめ。これは「教わったことをやってみました」と、研究熱心だけどつまらない写真を撮ってしまうことを避けるためです。フィルムの全コマ、本気でよろしく!

 

 

この無茶ぶりにも思える撮影実習ですが、驚くような結果になりました。

撮影した写真を全部、L版サイズにプリントしてみましたが、どの写真も面白くてはずれなし!そして、それぞれの人の個性が見事に現れていました。いやこれは、個性というより、作家性と言ったほうが適切だと思います。

こんなことができるなんて!と、参加者もこっちもびっくり。これまで多くのワークショップをやってきましたが、このように全員が作品になるような写真を撮ったことは、さすがにありませんでした。

このなにも教えないワークショップ、ほんとうに成功でした。

 

レンズの改造をはじめるひと
@「はじめてのアナログ写真ワークショップ」
こちらからは何も教えていません!

 

「正しい写真」という思い込み

写真の知識を得ることは「正しい写真」という思い込みを作り出してしまうことがあります。しかしそんな正しい写真はどこにも存在しません。

ですから、まずは「写真とはこういうもの」という思い込みを置いて、自由に発想していくことで、自分の作品のイメージを作り上げていくことができるのだろうと思います。

これからもわたしたちのワークショップが、写真を始めるひとに、イメージの旅へと自由に踏み出すきっかけになれば、とても嬉しく思います。

 


開催予定のワークショップは「現在募集中のワークショップ」のページをごらんください。

 

 


オリジナルフィルム現像液 |東京パイロ TOKYO PYRO

東京オルタナ写真部では、オリジナルフィルム現像液「東京パイロ Tokyo Pyro」を開発しました。ありきたりな画になる要素を排し、アナログ写真ならではの美しい画に全振りしたフィルム現像液です。

世界の写真コミュニティで話題の最新現像液「510 Pyro」よりも、はるかに美麗な画像を得ることができます。

デジタルでは代替できないアナログの魅力を最大に活かす、最先端フィルム現像液。東京オルタナ写真部ショップで好評販売中です!

 

東京パイロ 販売ページ

東京オルタナ写真部ショップ:東京パイロ

 

東京パイロ 詳細ページ

東京パイロについてより詳しい解説は次のページ「オリジナルフィルム現像液 |東京パイロ TOKYO PYRO」をご覧ください。

オリジナルフィルム現像液 |東京パイロ TOKYO PYRO
現像液:東京パイロ フィルム:RPX100(35mm)東京パイロは、東京オルタナ写真部ショップにて好評発売中です!東京オルタナ写真部ショップオリジナルフィルム現像液 東京パイロ東京オルタナ写真部のオリジナル現像液「東京パイロ」をご紹介します。美しい画と使いやすさを両立した他にないキャラクターの現像液です。マイクや楽器の音質にこだわる音楽の世界では、大量生産の機材に満足できない人々は自ら機材を開発します。そのような小規模生産機材のこだわりの音は「ブティック・トーン」と呼ばれます。現像液「東京パイロ」は写真...