デジタルネガティブ・ワークショップ
先日開催したデジタルネガティブ・ワークショップでは、サイアノタイプの伝統的処方のデータを取りました。
サイアノタイプなどの古典的な写真技法は紫外線付近の光にしか感光しないため、ネガフィルムを感光化した紙に密着させてプリントする方法が一般的です。その密着プリント用のネガフィルムをインクジェットプリンターで出力したものがデジタルネガティブです。
プリントしたい画像の階調を反転してデジタルネガ用フィルム(ピクトリコTPS100)に出力すればデジタルネガティブは完成です。って、それはそうだけど、そんなに簡単な話でもないのです。
狙い通りのきれいな階調を再現しようとするなら、データの調整が必要になります。デジタルネガティブ・ワークショップでは、そのデータ調整を実地で行います。
デジタルネガティブとは言え、データを取る方法は基本的にアナログ写真と全く同じです。基本のステップは3つ。
- 黒を決める。
- 白を決める。
- 中間のトーンを調整。完成!
そしてこの方法は、サイアノタイプに限らず、他のすべてのプリント技法に汎用性があります。一般的な古典技法(オルタナティブプロセス)の場合、黒は露光時間(露光量)で決定し、白はデジタルネガティブの最大濃度で決定します。そして中間のトーンはトーンカーブ(あるいはカラープロファイル)で調整します。
サイアノタイプの処方による違い
- クエン酸鉄アンモニウム
- 赤血塩
- シュウ酸鉄アンモニウム
- 赤血塩
- (重クロム酸アンモニウム)
- (界面活性剤)
- 感度
- 伝統的処方は新処方に比べて3ストップ程度感度が低い。つまり露光量が8倍必要。
- コントラスト
- 伝統的処方のほうがコントラストが高い。(つまり伝統的処方のほうがネガのコントラストは低くなる。)
- 色
- シャドウ部はそれほど違いはない。ハイライト部は新処方は白く抜けるが、伝統的処方は黄色く染まる。
- 画像の安定性
- 伝統的処方は新処方に比べて、画像の安定性が低い。紙に定着しにくく水洗とともに画像が流出する。水洗時間を長くすると、シャドウ部の濃度が低下し、ハイライト部のトーンが消失する。
- 感光液の扱い方
- 伝統的処方
- 2液に分けて保存できる。使用時に混ぜ合わせるので手軽に常に同じ状態で使用できる。
- 新処方
- 1液で保存。調合からしばらくは不純物が析出するので使用前に必ずろ過が必要。時間が経つと濃度や色が変化する。感光液はやや不安定だが、1年以上は使用可能。
- 伝統的処方
サイアノタイプの伝統処方と新処方には、だいたい以上のような違いがあることがわかりました。
どちらがいいか?それは何とも言えません。それぞれ長所と短所があります。画の特徴から言うと、新処方はスッキリとしたハイライトできれいに画が出ますが、伝統的処方の着色した中間〜ハイライトも味があります。どちらを使うかは好みでいいと思います。
それぞれの注意点は、伝統処方は水洗しすぎないことと表面をこすらないこと。新処方は不純物が析出していると画が流れるので必ずろ過することです。
デジタルネガティブ調整のコツ
- あせらず落ち着いて。
- 近道しようとしない。
- こだわらないこと!
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ピクトリコプロ・デジタルネガは東京オルタナ写真部ショップにて販売中です。