写真の古典技法のなかで比較的簡単に始められるサイアノタイプ。
しかしこのサイアノタイプも、表現として追求していくと奥が深いことがわかってきます。
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写真の古典技法を、現代的な表現として進化させた写真を「オルタナティブ写真(alternative photography)」と呼びます。(だいとうは、このオルタナティブ写真の作家です。)
以前にも紹介したサイアノタイプは、古典技法の中でも比較的簡単に始めることができます。それは、使用する薬品が少ない、水で洗い流すだけで現像できる、薬品が安価、などの理由によります。銀塩写真がその名の通り「銀」を使用するのに対し、サイアノタイプは鉄塩、つまり鉄を使います。古典技法には他にも銅や顔料を使ったり、果てはプラチナを使う方法もあります。
今回制作したのは、あるレストランで、クリスマスシーズンに飾るカードサイズの花の写真です。サイアノタイプは表現の自由度が少ないように感じていたのですが、あるロシア人写真家の作品を見て、考えが変わりました。やはりシンプルなものほど奥が深いのだと思います。
以下に今回制作した習作を少しご紹介します。
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サイアノタイプは本来とても鮮やかな青色をしています。
それもそのはずで、サイアノタイプの処理で生成される物質はプルシアンブルー(Prussian blue)そのものだからです。
ですが、その鮮やかな色を少し抑えることで、何とも言えない、渋くかっこいいトーンが出てきます。たとえば黒人音楽のブルース(Blues)の「青」は、もしかするとこのようなイメージなのかもしれません。
サイアノタイプの色を抑えるには「タンニン酸」を使うのですが、わざわざ薬品を購入しなくてもタンニン酸は身近なものに含まれています。お茶、赤ワイン、柿渋などです。要は苦いものですね。今回は、柿渋と紅茶でテストをしました。意外なものが写真に使えるものですね。(ビタミンCやコーヒーをFilm現像に使うこともあります。)
サイアノタイプはとくに設備や機材が無くてもできますので、興味をもたれた方はお気軽にご相談ください。
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デジタル写真は、手軽に自由に加工できることが大きなメリットですが、データとしてしか存在できないのが残念な点です。インクジェットプリントによる表現も多彩になってきてはいますが、手作りの本物が持つ魅力には及びません。
せっかくの機会ですから、このブログでも今後、古典技法を用いたオルタナティブ写真を少しご紹介していければと思います。