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ロラン・バルト『明るい部屋』に導かれて始まった東京オルタナ写真部読書会。いま、私たちの『明るい部屋』の理解がどのような場所にあるのかを報告する夜話会を開催します。

ロラン・バルト『明るい部屋』について

『明るい部屋』は人気のある写真論です。とても小さな手に取りやすい本ですが、しかしその内容は日本ではまったく理解されていないと言えます。この本への無理解ぶりは徹底しており、日本語版の出版社の公式の紹介文さえも、的外れで無意味な文章になっているほどです。日本語の解説本も出版されていますが、そちらも冗談のようなナンセンスな内容です。

私たちの読書会では、美術史、美術批評、思想、哲学、ギリシャ神話と、『明るい部屋』の背景にある本を読みついで来ました。新しく本を読むたびに『明るい部屋』の理解に新しい側面が開け続けてきました。

この本の理解が難しい理由は、ロラン・バルトが、わからない人にまでわかるように書く気がないことです。バルトは、説得してまで無関係の他人に自分の意図を受け入れてもらいたいとは、考えていません(そもそもそのような説得や説明はこの本の主題に照らして不可能だからですが)。それは読者が初学者であっても専門家であっても同じことです。そして、日本語訳の翻訳者がバルトの意図を理解しないまま翻訳していることは、この本へのアプローチをさらに困難にしています。現行の日本語訳は訳者の誤解と思い込みに基づいた翻訳となっており、問題を指摘できる箇所が数多くあります。

ただし、バルト自身は非常に誠実に、そして論理的にこの本を書いています。そのため、ていねいに読めば、中学校の理科の教科書のように、正確に意味を理解することができます。それはまた、理科の教科書には正しい理解しかなく、「読み手によって多様な解釈」が生まれることがないのと同様に、『明るい部屋』のテキストには正確な解釈しかないということでもあります。

ではこの本は、そんな論理的なだけで面白みのない本なのかと言うと、まったく逆です。読むたびに、非常に深く心を動かされます。元いた場所へは戻れないのではないかと思わされる場所へ連れて行かれるような本です。

現在の私たちの理解では、この本の重要な主題は、「魂(プシュケー)」と「音楽」だと言えます。このように書くと、乱暴な飛躍した解釈のように見えますが、この夜話会ではここに至るまでの経緯を、順を追い、根拠を示しつつお話していきたいと思います。

*この夜話会では『明るい部屋』の基本的な解説は行いません。

開催について

開催日程:2024年10月19日(土) 18:00~

  • 場所:上北沢駅(京王線)近辺会場

参加費:

  • 過去に東京オルタナ写真部『明るい部屋』読書会に参加された方:無料(カンパ、差し入れ歓迎)
  • 『明るい部屋』読書会に未参加の方:1,500円

夜話会の内容について:

この会では私たちの『明るい部屋』の理解の現時点についてお話します。他にはない内容であることはまちがいないと思います。基本的には過去に読書会に参加し、一緒に通読した方が対象のため、『明るい部屋』の概要の解説は行いません。

 

参加方法

参加希望の方は以下の申し込みフォームよりお申し込みください。

  • 申し込みフォームを送信後、折り返しこちらから詳細をご連絡いたします。もし2日以内にメールが届かない場合はお手数ですが下記メールアドレスまでご連絡ください。東京オルタナ写真部:info@tokyoaltphoto.com

 


「写真とは何か」という問い

 

「写真とは何か」という問いに対しては、これまで様々な人が色々なことを発言してきました。しかし問題の本質に向けて確実に近づこうとする試みはそれほど多くなかったように思います。

ロラン・バルトは『明るい部屋』で、哲学の方法論「現象学」を用いてこの問題に踏み出します。ロラン・バルトの歩みは断崖の縁を歩くように確実です。そしてこの本を読むことで、彼が立ち止まった地点に私たちもたどり着くことができます。

思わせぶりな言葉遣いで書かれたわかりにくい読み物という印象を持った人もいるかもしれません。しかし言葉をよく吟味し、さらに哲学の方法を知ることで、ロラン・バルトが歩いた道筋が浮かび上がってきます。この本は、写真家にとって深く切実な問題にまっすぐ向かって書かれています。その道のりを辿り、そこからの景色を見てみることは、写真で表現する人に深い励ましを与えるものになるはずです。

 

ロラン・バルト『明るい部屋』

 

東京オルタナ写真部:ロラン・バルト読書会より

唯一の存在を扱うありえない科学:ロラン・バルトを読む理由
私たちは、なぜロラン・バルトの読書会をするのか。 「生産性」という言葉 最近、「生産性」という言葉が深いショックを持って受け止められています。きっかけは、ある政治家の「同性カップルは『生産性』がないので、社会資本を彼らに割く必要はない」という主旨の発言でした。ある人の人生を「生産性」という言葉を基準にして評価できるという認識。この認識の犯罪的な傲慢さとおぞましさについては、いくら批判しても足りないほどです。ともあれ、私は写真家なので写真の話をします。写真の言葉についてです。 「いい写真とはな...
ロラン・バルト『明るい部屋』日本語訳の問題点
追記:私たちの指摘により、48ページ11~12行目の誤訳は2018年以降の版では改訂されました。東京オルタナ写真部ではロラン・バルトの『明るい部屋』の読書会を開催しています。『明るい部屋』は写真家に非常に人気のある「写真論」ですが、これほど誰もが知っているのに、何が書かれているのかほとんど誰も理解していない本というのも珍しいと思います。こんなことになっているのは、読者側の問題もいろいろとあるのですが、そもそも日本語の翻訳テキストの問題も小さくないと思われます。過去5回の読書会では英語訳とフランス語オリジ...
『明るい部屋』読書会を終えて
『明るい部屋』読書会:最後のディスカッション先週末は『明るい部屋』読書会の最終回でした。この本を読み終えて最後のディスカッションを行いました。本当にどう言えばいいのかわからなくてこんな言葉しか見つからないのですが、感動に包まれるような最終回になりました。愛と悲しみと世界の関係について、不可能なほど誠実に考えようとした本。それがこの『明るい部屋』です。読書会でレジュメを読み上げながら、私自身、感情が抑えられず何度も胸が詰まりそうになったことがありました。このようなことを言うと必ず「え、そんな本...