この時期に私たちがグループ展を開催する理由

東京オルタナ写真部 グループ展 #8

私たちは4月7日からグループ展を開催します。

新型コロナウィルスの感染が拡大しているこの時期に、展示を中止せずに開催する理由を述べておきたいと思います。これはこの展覧会のステートメントであると同時に、私たちが将来にわたって作品制作について考え続けるための記録でもあります。

 

 

現在、主要な美術館の臨時休館はすでに1ヶ月以上続き、多くの展覧会や文化イベントが中止や延期になっています。このような状況のなかで、私たちのグループ展も開催するかどうかを検討することになりました。

私たちはこれまで、ワークショップ、読書会、批評会、グループ展を通じて、アートと作品制作について考え続けてきました。その中で改めて明確になったことは、アートは人間の文明の長い歴史とともにあること、そして私たちはそのもっとも新しいページの上にいるということです。私たちはアートを過去から受け取り、次の世代に渡さなくてはなりません。それゆえ、私たちがアートを中断し放棄することは、歴史を踏みにじることであり決してやってはならないことです。

そうは言っても、私たちは写真家のグループです。自分自身がアートを代表する存在だとは考えていません。それでも展示を中止せず開催する理由は(そしてこれが最も重要な理由ですが)、それが自分自身が生きるために必要なことだからです。先の見えない不安感が覆う中で精神を健全に保つために、アートが存在し続けていることを自分の手で確認する作業が、私たちには必要だと感じています。

先日、ドイツ政府が感染拡大による経済への打撃を緩和するための施策を発表しました。その中で「アーティストは必要不可欠であるだけでなく、生命維持に必要なのだ。」と、芸術関連の個人や組織への大規模支援を明言しました。このニュースを読みアンネ・フランクのエピソードを思い出しました。彼女は雑誌のイラストや写真を切り抜き、隠れ家の自室の壁を飾りました。それは、過酷で不安な生活の中で人間らしく健全であるために、彼女にとって必要なことだったからです。

 

アンネ・フランクの隠れ家の自室の壁

 

 



このグループ展を中止するべき正当な理由が存在していることは十分に理解しています。しかしそれでも自分を内省してみると、いまほど仲間と開催するグループ展が必要だったことはないという感情に気づきます。それは自分が作品を制作する本質的な動機ともつながっています。

いま私たちは、この世界の隅に自分たちの作品を展示し、アートについて考えることが無意味ではないことを実感したいと願っています。ですから、自らの健康を犠牲にせず、社会に危険をもたらさない限りにおいて、私たちは自分が生きるために必要なことをしたいと思います。

作品は見てもらうことで成立するものです。しかしいま、展示を見に来てくださいとお願いすることはできません。通常の写真展にはならないことは明らかです。しかし写真作品を制作し展示するというアート活動が、いまも停止せずに存在していることを共有できれば、この展覧会を開催する意義はあると考えています。私たちが自分のために行うこの活動が、もし誰かを少しでも励ますことになれば、それ以上の喜びはありません。

個人的な感情が普遍的な価値と重なる可能性は、ふつうの場合はほとんどありません。このことをロラン・バルトは「不可能な科学」と呼びました。作品展示をするべきか悩む私たちはいま、この問いに切実に直面しています。

不可能な科学 - La science impossible

これは、まだ世界がいつもどおりだった数ヶ月前に決めたこのグループ展のタイトルです。

 

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