最新更新日:2021年6月17日

もしかすると、いまどき銀塩写真を始めたいひとがいないとも限らない。

万が一、そんな人がいた場合に備えて最近の銀塩写真情報をぼちぼちとまとめていきます。カメラ編に続きフィルム編。それもモノクロフィルム。風前のともし火と言われはや10年余。名を変え、国を変え、しぶとく生き続けています。
I'm still STANDING!!

モノクロフィルム、まだ買えます。買えますとも。
今回はフィルムベースに和紙を使ったフィルム和紙!

 

写真用モノクロフィルムの現状

 

そもそもカラーフィルムが普及した時点で、モノクロ(白黒)フィルムはまだ必要なのか?という議論もあったのではないかと思います。しかし、白黒フィルムはカラー時代を生き抜きました!それは、カラーフィルムをモノクロ画像にするよりも、最初からモノクロフィルムで撮影した方がだんぜんきれいだったからです。

デジタル時代にも同じことが言えるとは思うのですが、デジカメにフィルムを入れて撮影するわけにいかないので、フィルムカメラが衰退するとともにフィルム生産も大幅縮小されました。しかしモノクロフィルムはこのまま無くなるのか、と思いきや、国を変え、会社を変え、工場を変えて、多くのモノクロフィルムの生産はまだ続いています。

 

FILM WASHI 

 

世界最小のフィルムメーカーを自認するFILM WASHI 。数年前に登場したときはネタ感が強かったのですが、フィルムのデータシートをきちんと公開し、本気度を感じさせます。

FILM WASHI。フィルムワシ。フィルム和紙です。フランスのサン=ナゼールという街にある小さなフィルム工場です。

・FILM WASHIウェブサイト
http://lomig.fr/index-en.html

 

 

フィルムで和紙。サイトの説明によると和紙は透明なんだそうです。そ…そうだったかな。ともあれ、その透明な和紙をフィルムベースに使った白黒フィルムです。

「透明」とはいえ、そこは和紙。現像してプリントすると、紙の繊維がしっかり写りこみます。画像からして紙の質感。クラフト感ありますね。

 

FILM WASHI

 

FILM WASHI

 

今のところはこのフィルム和紙、コントラストが強くて階調再現がいまいちのように思えますが、今後も改良を続けていくので、アイデアや意見を知らせて欲しいとのことです。また、撮った写真はぜひシェアして欲しいとのことでFacebookページでいろいろな作例を見ることができます。

フィルムWASHI Facebookグループ

 

FILM WASHI W, V

 

FILM MASHIの名前の由来である手製フィルム。WとV

W」は楮(こうぞ)紙をベースに使っています。赤色に感度のないオルソクロマチックです。

  • フィルム感度とサイズ
    • ASA25
    • 35mm、120サイズ、620サイズ、4x5、5x7、8x10、カスタムサイズも対応可能
  • データシート

 

V」は雁皮(がんぴ)紙をベースに使っています。Wよりも透明度は高くなっています。乳剤は全ての色に感光性のあるパンクロマチックです。

  • フィルム感度とサイズ
    • ASA100
    • 35mm、120サイズ
  • データシート

  

フィルム和紙の現像方法

Développement d'un film "W" (Washi) NOW WITH SUBTITLES!!!

タンクは使わずにトレーで現像します。しかし現像タンクで現像処理できるようにキットが販売されています。キットを使用した現像方法は次の動画で解説されています。

Washi Film V Review and Home Development

 

FILM WASHI A, F, D, S, Z, I, R

 

これらは機械コーティングされたものです。乳剤は特殊用途ものを転用しています。

  • A
    • 映画フィルムの保護用フィルム。
    • 感度12。35mmサイズ データシート
  • F
    • 医療用X線フィルム。ハレーション防止層なし。光がにじむ。
    • 感度100。 35mmサイズ データシート
  • D
    • 航空写真用フィルム。高コントラスト。
    • 感度500。35mmサイズ データシート
  • S
    • 映画光学録音用フィルム。超高解像度。
    • 感度50。35mmサイズ、120サイズ データシート
  • Z
  • I
    • 産業検査用フィルム。オルソクロマティック。アンチハレーション層なし。
  • R
    • 写真印画紙を35mmフィルムサイズにカットしてパーフォレーションをつけたもの。
    • 反転現像でポジ画像を得られる。
    • 35mmサイズ データシート

銀塩写真の最近の情報をまとめるシリーズ、モノクロフィルム編。
前世紀の遺物。風前のともし火。なんとでも言え。どっこい生きてます。
今回が最終回。有名フィルムから小規模生産フィルムまで紹介してきました。

銀塩アナログ写真は写真技術としてのみならず、ひとつの大きな映像表現の文化だったと言えます。そして文化が失われるのは、歴史が失われることでもあります。オルタナティブな写真表現として銀塩写真が末永く残るように、ぜひフィルムで写真を撮って楽しんでもらいたいと思います。


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開催予定のワークショップ

開催予定のワークショップは「現在募集中のワークショップ」のページをごらんください。

 

フィルム:Rollei RPX400 現像液:ADOX FX39
ワークショップ撮影実習にて
©東京オルタナ写真部

 

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