グループ展参加の案内:2020年4月@Roonee 247

※このページは、東京オルタナ写真部グループ展参加者のためのページです。

 

ステートメント

 

以下は今回のグループ展のステートメントです。

 

La science impossible 
東京オルタナ写真部グループ展 #8

 


 
La science impossible / 不可能な科学 (ロラン・バルト『明るい部屋』28章より)

どの「作品」にもあらかじめ決められた宿命のようなものがあります。それは、展示され、見られ、そして一般的なものに変換されてしまうということです。

それはつまり、自分にとって本当に切実なものを、そのまま何も変えずに作品にすることはできないということでもあります。

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東京オルタナ写真部ではロラン・バルトの後期の仕事を読む読書会を開催してきました。私たちが彼の作品に関心をもったのは、彼が自分にとって本当に切実なものを、何も変えずにそのまま書こうとしたからでした。彼は愚鈍なほどの誠実さで、自分の恋愛について、そして自分にとっての写真について書きました。

見られ一般化されることに徹底的に抵抗し、自分の感情だけを根拠に普遍性を目指そうとするバルト。しかしそれは狂気の果てにしかあり得ない、不可能な科学です。

自分にとって切実であればあるほど、それをそのまま作品にすることはできない。このジレンマを乗り越えることはできないのでしょうか。

今回の私たちの展示は、バルトが直面し全てをかけて挑んだこの謎に、少しでも近づこうとする試みです。

 

グループ展テーマ

 

La science impossible|不可能な科学

 

今回のグループ展はロラン・バルト読書会の企画から始まりました。とはいえ、読書会に参加されていない人もグループ展に参加できます。今回はロラン・バルトに関連したテーマを(ゆるく)設けたいと思います。

La science impossible de l’être unique
固有の存在のための不可能な科学。

これは『明るい部屋』の28章に出てくる言葉ですが、バルトにとってのある理想を表しています。

知のドン・キホーテ:ロラン・バルト

 

作品にならない作品

 

バルトの問題は、実は私たちにとっても切実なものです。

たとえば、個人的な体験を作品にしたくて制作に取り組んでいるけれど「作品」にできるのかどうかわからない、ということが実際に起こります。

それは「作品」というものが、すでに一般化されたものだからです。展示されて「作品」として受け止められた時点で、他のものには取り替えられないはずの個人的な体験は別のものに変質してしまいます。

つまり、その人にとって切実なものであればあるほど、それは作品にできないというジレンマに陥ります。このことは東京オルタナ写真部のグループ展でもこれまで何度か議論のテーマになってきました。

そこで今回は、そのままでは作品にならないような作品について考える機会にしたいと思います。

 

今回の展示作品について

 

一般化できないもの。たとえば、個人的なことでそれについて語れないようなもの。自分にとっては切実だけど、人に見せても伝わらないようなもの。言葉で説明すると損なわれてしまうようなもの。そのような作品(?)を今回は募集します。

もう少しわかりやすく言うと、今回の展示で募集するのは、インスタグラムやFacebookで大勢の人に向けて公開することに意味がないような写真で、しかし、自分にとっては意味がある写真です。そのような写真が作品になりえるのかどうかを一緒に考えたいと思います。

どのような結果になるかはわかりませんが、展示までの過程のディスカッションも大事にしたいと思います。

展示方法は自由です。額装は必ずしも必要ではありません。壁面以外の展示でも大丈夫です。

今回はテーマの性質上、作品にタイトルやキャプションはつけません(作家名だけにしようと思います)。その代わり、ディスカッションした上でロラン・バルトの著作から適切な引用を添えることはできます。もちろん、それもなしでも構いません。

自分が撮影した写真でなくても展示できます。その場合は著作権などの問題はクリアしておいてください。また写真と組み合わせるのであれば、写真以外のものも展示できます。

 

参加条件

 

  • プリントスタディで展示プランのディスカッションをしていること。
    • ディスカッションの内容と全く異なるプランの展示はできません。
    • 直前に大幅な変更がある場合は必ず相談してください。
  • (追記)プリントスタディに代えて、メールとオンラインミーティングを利用します。
    • 展示作品は事前にメールやチャットなどでディスカッションしたものと必ず関連のある作品にしてください。
  • 基本的にはアナログプリント技法を使用していること。
    • 展示プランによっては例外も認めます。

 

日程について

 

プリントスタディ

集まる機会を少なくするために、メールやビデオチャットなどを利用して準備を進めます。参加を考えている方は、プロジェクトの簡単な説明と作品の参考画像をメールで送付してください。 info@tokyoaltphoto.com

以下の日程でプリントスタディを行う予定です。展示プランのディスカッションを希望される方は事前にメールでお知らせください。聴講のみの参加も歓迎です。その場合もメールでお知らせください。
(プリントスタディに参加される方は、会場費カンパとして1,000円をお願いいたします)

 

グループ展日程

2020年4月7日(火)から4月12日(日)まで
会場:Roonee 247 搬入日:4月5日(日)17:00~

 

 

会場について

Room1と2の両方を使用します。
  • 壁面展示:点数、サイズ、特に制限なし。額装等は各自でお願いします。
  • 机上の展示: 応相談
  • 立体作品の展示:応相談
  • プロジェクター等の使用は内容次第で可能です。

 

参加費について

 

グループ展参加費はひとり10,000~17,000円程度になるようにしたいと思います。(経費を等分しますので、参加人数により変動します。)

 

プリントスタディ

 

  • ディスカッションしながら作品のプランを深めていきます。
  • プリントスタディに参加される際は、参考のためのプリントをお持ち下さい。完成作品でなくても結構です。
  • 写真プリント以外の資料なども必要に応じてお持ちください。
  • 説明していただきたいのは、まず作品プランの内容と方向性です。そして自分はそのテーマやモチーフにどのような魅力や切実さを感じているのか、ということもできるだけ(可能な範囲で)お話してください。
  • アイデアを競うことが目的ではありません

 

何かご質問などありましたら、大藤までお気軽にご連絡ください。
info@tokyoaltphoto.com

 

 第4回グループ展の作品講評

下のリンクから以前のグループ展出展作品の講評を見ることができます。ご参考までに!

1712グループ展プリントスタディ(PDF)

 

参考記事など

 

 二人の思想家と批評家:ロラン・バルトとケネス・クラーク 芸術、美術、アート。優れている、優れていない。その評価って何なんでしょうか。わたしたちが一般的に考える美術評価の方法は2種類あるように思われます。A:「ひとが高く評価しているものがいいんだよ。」B:「自分がいいと思うものがいいんだよ。」A:本やメディアで取り上げられ評価されている作品が評価されるべきものだ。あるいは、B:作品の評価は自分の好き嫌いの感覚で決めていい。このどちらかを、状況に応じて使い分けているというのが実情ではないでしょうか。...

 

前回の記事のつづきです。    「正しさ」には従わなくてはならないのだろうか どうしても動かし難く存在し、他の何とも交換のできない私だけの感情。「正しいこと」がそれを否定しようとするとき、私たちは「正しさ」に従わなくてはならないのでしょうか。もし「正しいこと」が、不完全な仕方で語られたものだった場合、私たちはそれに抗うことができるのでしょうか。これに対する答えは「自分が感じればそれでいい。アートに言葉はいらない。」でしょうか?私たちはそれは受け入れられないことはすでに以前の記事に書きました。...