アイデアの勝負史|写真レンズの歴史-2
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写真を写すには、なにはともあれ、まずきれいな映像を取り込むことが必要です。ただ光があるだけでは明るいか暗いかしかない。かたつむりの目は明るさと暗さしかわからないらしいですが、ここは人間の視力を基準にしたい。
光を映像にするもの、それがレンズです。だが話はそんなに簡単ではなかった。レンズを使って光を映像にしようとすると、深刻な問題が続出します。
前回はレンズの問題点「収差」を整理しました。もういちどざっくりまとめてみるとこんな感じです。
暗い不鮮明な画像でよければ小さい穴(ピンホール)でも映像を写すことができる
凸レンズを使えば映像が明るく鮮明になる!
しかし、レンズにはいろいろな問題があることがわかってきました。とくにレンズの周辺部を通過した光は映像の質を悪くします。それなのに…
映像を明るくしたい
→ レンズを大きくすればいい
→ レンズの周辺部を通過する光が増える=ボケる!
広い範囲を写したい
→ 広い角度から光を取り込めばいい
→ レンズの周辺部を通過する光が増える=ボケる!
ともかくレンズちゃん、周辺部の光が苦手すぎ。でも明るくしたり広角にするには周辺部の光までたっぷり使うしかない。これは無理ゲー。
ではどうするのか。そう、ここから「写真レンズの歴史」が始まります。最初に難問があり、それをみんなでアイデアを出し合って解決してきた。写真レンズの歴史とは、光学技術者たちがアイデアを出し合ってレンズの問題をひとつひとつ解決してきた道すじだと言えます。
よし、では写真レンズの歴史を順を追って見ていこう!となりますよね。しかしこれもまたそんな単純な話ではないようです。『写真レンズの歴史』の著者ルドルフ・キングズレークも、当初は写真レンズの歴史を時間を追って書こうとしたのですが、それができないことがわかって困ったそうです。その理由は、いろんな種類のレンズがてんでばらばらに発展してきたからです。
問題解決のためにあれこれたくさんの方法が考案され、また、ニーズに合わせて様々なレンズが使われ続けた。たとえば、造りが単純で製造コストが低いレンズは古い設計でも安いカメラに長期間使われ続けます。そしてそれと同じ時期に、複雑で高性能で高価なレンズも開発されます。そのようなわけで、写真レンズの歴史は時系列で整理することが難しくなっています。
でもわかる。それわかる。写真がデジタルに進歩した21世紀にアナログ写真いいよ!とか言うひと(わたし)、後世の歴史家からしたら、なんなんこいつ、てなる。ごめんなさい。
そうはいっても、人に歴史あり。人がいたならそこには歴史があります。写真レンズの歴史を年表風にまとめてみます。
1812年頃、イギリスの科学者ウォラストンが三日月型の凸レンズ(メニスカスレンズ)を逆に使うと映像を平面に映せることを発見。
この時期はいろいろな新しい形のレンズが開発された。
一般的に焦点距離の長いレンズのことを望遠レンズと呼んでいますが、実はあまり正確な用法ではありません。本来の技術的な意味では望遠レンズとは、カメラの全長が焦点距離より短いレンズのことです。たとえば焦点距離500mmのレンズが実際に50cmもあったら大きすぎて使いにくい。もっと短いほうがいい。という経緯で開発されたのが望遠型レンズ。この設計、実は後に大成功する一眼レフカメラになくてはならない大発明でした。なんと逆さまに使うんです↓
参考にしている本『写真レンズの歴史』は1989年に書かれたので、デジタル写真時代のことは触れられていません。20世紀後半以降、写真レンズの設計にどんな新機軸があったんでしょうね。
撮影後にピント合わせできるレンズやレンズレスカメラなどが話題になることがありますが、これらはどっちかというとデジタルによる画像処理技術がメインのようです。個人的な趣味で言うとガジェット寄りのアナログな話題のほうがわくわくします。
胃カメラや光ファイバーとかはかなり新機軸な感じがしますね。焦点可変レンズ、とくに液体レンズはわくわく度高めです。
もし20世紀後半以降のレンズ開発の歴史で知っておくべきトピックがありましたら、メールなどでお知らせください!
次回は「レンズの型」です。写真レンズの歴史はアイデア勝負の世界。良いアイデアが淘汰され残っていきます。そんな弱肉強食世界のチャンピオンたちは「型」として独自進化します。現代レンズのもとになったレンズ型を紹介します。