今朝、Googleを開いてみたら、ロゴが家族の肖像写真風になっていました。

クリックしてみると…ほう。今日はダゲールの誕生日なんですね。
1787年生まれだから生誕224年。
モーツァルトが若干35歳で亡くなったのが1791年ですから、世代は違えど同時代人。もしモーツァルトが長生きしていたら、写真に写っていた可能性もあるわけです。

Louis Jacques Mandé Daguerre

ダゲールはダゲレオタイプ(銀板写真)という、実用化された世界最古の写真術を発明した人です。彼は発明家や研究者というよりは興行師で、現実の風景そっくりの絵を壁に大きく描いた「パノラマ館」という見せ物小屋を作って、見物人を集めて商売をしていました。なかなか面白そうな人生を送ったひとのようです。

そのうち、もっと本物っぽく見せたいという気持ちがつのり、写真研究の祖、ニエプスに共同研究を持ちかけて、ニエプス没後に銀板写真を発明したのでした。

ダゲールが銀板写真を発明した1839年は、産業革命が全盛を迎える時代で、技術的イノベーションには国家威信がかかっていました。一興行師の商売の種として生まれた写真術ですが、すぐにフランス政府が特許を買い上げ、ダゲールには高額な年金を保証しました。イギリスの荘園主、タルボットもまた同時期にカロタイプという写真術を発明したのですが、どちらが先に写真を発明したかという論争になったりしました。

現実的には、写真は光学技術や化学技術の複数の技術が組み合わさってできているので、だれかひとりの発明者がいるというようなものではないと言えます。

冒頭に書いたモーツァルトですが、モーツァルト自身の写真は存在しませんが、妻の写真だと言われているダゲレオタイプが存在します。あの悪妻(?)として名高いコンスタンツェ・モーツァルトです。

この1840年に撮影されたダゲレオタイプの、前列左に写っている女性がコンスタンツェだと言われています。
事実であれば78歳ですね。

この写真については真偽が議論されているようですが、写真史的にはこれを1840年撮影だとする時点でかなり無理があります。

なぜなら、1840年の段階では、この写真のように周辺部まできれいに写る明るいレンズはまだ生産されていなかったからです。周辺まできれいに写るレンズが無いわけではなかったのですが、とても暗いレンズだったため、30分ほど露光しないと写真が写りませんでした。

この人物たちが30分間、同じ姿勢でじっとしていたとは…ちょっと考えられません。

コンスタンツェは1842年に亡くなっています。

ところで、よく誤解されますが、歴史的なダゲレオタイプは日本にはほとんど存在しません。
日本に伝来したのは、その後に発明されたガラス湿板写真です。

日本に残る歴史的なダゲレオタイプは、薩摩藩主、島津斉彬を写した不鮮明な失敗写真がひとつあるだけです。(それ以外では黒船に乗ってきたアメリカ人写真師が日本滞在中に撮影したものがあります。でも実物は日本にはないのかな。ともあれ、日本人によって撮影された歴史的なダゲレオタイプは、島津斉彬の写真が唯一のものです。)

ですから、たとえば写真師上野彦馬が坂本龍馬を撮影した有名な写真、あれはダゲレオタイプではなく、ガラス湿板です。

そんなわけで(どんなわけだ)、最近のだいとうは暗室でガラスを切る練習なぞをしているわけです。